「やってる振り」の外務省 知ってはいけない日本の不都合な真実

やはり大失敗に終わった北方領土交渉
矢部 宏治 プロフィール

公文書を偽造して、自国の首相を失脚させた外務省

それだけではない。日本の外務官僚が強く批判されるべきは、彼らが「やるべき仕事をやっていない」だけでなく、逆に日本という我々の祖国に対し、大きな害をおよぼしているからだ。

ちょうどよい機会なので、私が『知ってはいけない』(2017年)と『知ってはいけない2』(2018年)を刊行したあとに詳細を理解した、きわめて重大な事実をここで書いておこう。

下の文書は、2010年の鳩山首相失脚の最大の原因となった、いわゆる「120キロ問題」についての公文書だ。この文書にもとづいて同年4月19日、船越健裕・外務省日米安保条約課長と芹澤清・防衛省日米防衛協力課長の両名が、鳩山首相を公邸に訪ね、〈米軍には、ヘリ部隊と地上部隊は共同訓練を行う必要があるため、120キロ以上離れた場所に駐屯させることはできないというマニュアルが存在する。したがって、鳩山首相が普天間移設問題の切り札として実行を指示された徳之島移設案は、同島が沖縄から200キロ離れた場所にあるため、絶対に実現不可能〉との内容を説明した。(この問題については、本年3月17日放送のテレビ朝日「田原総一朗の全力疾走スペシャル」に出演したときにも一部、解説した)

この説明を信じた鳩山首相は5月4日、政権交代の看板政策のひとつだった普天間基地の県外移設を断念すると沖縄で表明。県民の大きな怒りを買い、その1カ月後の6月4日には退陣に追い込まれることになった。

ところがその後、鳩山氏の元側近議員が米大使館に照会したところ、「そのようなマニュアルは米軍には存在しない」との回答があった。つまりこれは、日本の超エリート官僚たちが公文書を偽造して自国の首相を失脚させたという、前代未聞の大スキャンダルなのである。

詳しくは、いま私がジャーナリストの布施祐仁さん(稲田防衛大臣が辞任に追い込まれた「自衛隊日報問題」の報道で知られる)と実験的に続けている「すぐれたノンフィクション作品の紹介番組「いまこの本を読め」」のなかで、鳩山首相へのロングインタビューを行い、YouTube上に無料公開しているのでぜひご覧いただきたい。

この鳩山失脚に向けての政治工作は、日本の官僚たちが「日米安保村」の意向を忖度して独自に行なったもので、アメリカ国務省も国防省も関与していない。つまり「日米安保村」のど真ん中にいる日本の超エリート官僚たちは、本書中に登場する「日米合同委員会」(船越・芹澤両課長はそのメンバー)の決定を変えないためには、公文書を偽造して自国の首相を失脚させることまでやるということなのだ。

近年次々と明らかになるモリカケ問題や統計不正問題など、官僚による無数の犯罪行為の背景にも、すでに日本の超エリート官僚たちが9年前に最悪のルビコン川を渡ってしまった、この大スキャンダルが存在する。歪みに歪んだ日米安保条約と日米地位協定の上に生まれた「日米安保村」は、ついにそこまで異常な状態になっているのだ。これもまた、悲しいが現在の日本社会における「基本原理」のひとつなのである。

本書(漫画版)にはそうした「日本という国の真実」を読み解くための「基本原理」が、ワンセットまるまる、きわめてわかりやすく描かれている。原理を知れば、細かな情報に惑わされることなく、正しい判断ができるようになる。文字だけの本は読みづらいという方にも、ぜひ読んでいただきたい。

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