アメリカで話題「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教」とは一体何か

「アーメン」ではなく「ラーメン」
岡本 亮輔 プロフィール

インテリジェント・デザイン説は日本では馴染みがないが、難解なものではない。何らかの知的存在(インテリジェント)がこの世界を創った(デザインした)という見方だ。要するに、キリスト教の教義の焼き直しである。

旧約聖書によれば、世界は神が6日間かけて創った。世界はビッグバンのような偶然から始まったのではなく、その後のすべての出来事にも神の意思が透徹している。人は猿から偶然に進化したのではない。一人一人の運命もすべて神が定めたものであり、どんな悲劇であろうとも、ある人が生まれて死ぬことには神のみぞ知る意味がある。このように世界から偶然を排除して、すべてを必然とするのがキリスト教の世界観である。

 

そして、ID説はキリスト教的世界観を公教育に持ち込むために作られたものだ。見かけ上の宗教色を払拭するために、「神」という言葉を「知的存在」で置き換えたにすぎないのは明らかだろう。

キリスト教であれID説であれ、それが私的に信じられる分には問題ない。日本でそうした宗教的な教えが、あからさまに公教育に持ち込まれる局面というのは考えにくい。

しかし、米国の場合、聖書で描かれた天地創造を科学的に証明しようとする「創造科学(Creation Science)」を教える大学が存在する。

もちろん創造科学はニセ科学だが、博物館まである。シンシナティ近郊の創造博物館(Creation Museum)は、7000平方メートルに及ぶ敷地に動物園と植物園も備えており、膨大な展示とアトラクションを通じて、聖書に描かれた歴史を学んで体験することができる。

例えば同博物館の展示では、恐竜の化石はかつて世界で大洪水が起きた証拠として、つまり、ノアの方舟に結びつけて説明される。

ヘンダーソンがFSMを立ち上げたのは、こうしたキリスト教による公的領域への侵食を批判するためだ。

仮にキリスト教の天地創造の焼き直しのID説が公教育で認められるならば、それ以外の宗教的(=非科学的)説明も認められなくてはおかしいというわけである。ID説の歪さを明らかにするために、空飛ぶスパゲッティ・モンスターというあからさまにおかしい神を作り出したのだ。