トランプが「核の傘」放棄発言をしたことにお気づきですか?

核武装させるのかカネを取りたいだけか
河東 哲夫 プロフィール

オチは米国の核の傘にカネを払うこと

これからものごとはどう転がっていくだろう? 

まず国際情勢の大きな枠組を見てみよう。今の情勢は、米国、ロシアが1987年の中距離(陸上配備)核ミサイル全廃条約を相互に放棄して、陸上配備の中距離核ミサイルの整備・配備に乗り出しているところである。

米国、ロシアが念頭に置いているのは、お互いよりも中国である。と言うのは、中国は100基を超えると推定される(国際戦略研究所『ミリタリー・バランス2010年報』)中距離核ミサイルを陸上配備していて、日本、そしてグアム島の米軍基地はもちろん、ロシアのウラル(工業の中心地)方面まで攻撃することができるからである。

イランやパキスタン、そして北朝鮮の保有する核ミサイルも、ロシアにとって脅威である。

ロシアは既にイスカンデルという中距離すれすれの短距離ミサイル、そして「カリーブル」という中距離巡航ミサイルを保有する。そして少なくとも前者は、核弾頭搭載可能である。

 

米国は、既存の中距離巡航ミサイル「トマホーク」に類似したミサイルを陸上でも発射する実験を8月18日に成功させたばかりである。トマホークは2000年代までは核弾頭を装備していたのだが、ブッシュ・ジュニア時代の決定で核弾頭は撤去され、現在は通常火薬弾頭装備のものしかない。

トランプは、オバマ時代に縮小した国防予算を増強し、特に核兵力の分野ではロシア等、他国を寄せ付けない優位を築く姿勢を明らかにしている。だから、トマホークの核弾頭再装備は時間の問題だろう。

米ロ双方は、中距離核兵器全廃条約をダメにしたのは相手だという非難合戦を続けつつ、裏では待ってましたとばかりに、陸上中距離核ミサイルをどこにいくつ配備するか、そういう実行の段階に既に入っているのだ。

だからその一環として、新任のエスパー米国防長官は早速、日本を含むアジアの同盟諸国に陸上発射型の中距離ミサイルを配備する意欲を示している

まだ時間はかかるとしつつも、これで在日米軍基地、グアム、ハワイ等への攻撃を牽制したいのだろう。日本本土への配備は無理だとしても、米国としてはこの中距離ミサイルを米軍艦船等が日本の領海、港等に持ち込むのを認めるよう求めてくるだろうし(「非核3原則」は核の持ち込みも認めていない)、この新型(上記のように別に新型でもないのだが)ミサイルで日本に核の傘をさしかけてやることに対する代価=カネの支払いを求めてくるだろう。

「俺は取り引きがうまいんだ」と自画自賛するトランプにとっては、いい恰好ができる絶好のチャンスとなる。