トランプが「核の傘」放棄発言をしたことにお気づきですか?

核武装させるのかカネを取りたいだけか
河東 哲夫 プロフィール

「怖くない」で無視か、それとも独自の核武装か

核兵器の問題で最良の対応はおそらく、これを無視することかもしれない。と言うのは、核兵器は敵の攻撃を撃退したり、攻撃を思いとどまらせるための兵器であって、核兵器で脅迫して特定の目的を遂げるような例は、広島・長崎への原爆投下以後はないからである。

現在の世界の情勢では、核兵器は「使えない」ものになりつつあり、戦略的な(つまり相手の本土に大きな広範囲な被害を与えるもの)兵器としては通常火薬弾頭の精密誘導兵器、ドローン集団による敵の心臓部の攻撃、あるいはサイバー攻撃で敵の経済インフラを麻痺させる等の方が主流となりつつある。

そして日本に米軍基地がある限り、あるいは日米関係が米国にとって重要なものである限り、米軍の保有する核兵器が(それがグアム島や海中の潜水艦に配備されたものでも)抑止力として機能する。

また、今、トランプがやっていることだが、核ミサイルを持つ国と手を握ってしまえば(トランプの場合、北朝鮮)、その国のミサイルは脅威でなくなってしまう。

日本がロシア、北朝鮮、中国の核ミサイルを警戒するのは、その3国が米国と対立していて、日米同盟を敵視してきたからだ。

 

そうは言っても、核は怖い。将来、朝鮮半島が核兵器を持ったまま統一したりしたら、なお怖い。しかし、トランプ米国は「それは日本の問題だ」と言って、そっぽを向くかもしれない。となると、日本自身が核武装する、という選択肢を考えなければならなくなる。

日本政府の解釈では、日本憲法は核武装を禁じていない。

日本の歴代内閣は「防衛のための必要最小限の実力であれば核兵器を持つこともできる」という見解である。

最初に明らかにしたのは岸信介首相で「……従って名前は核兵器とつけばすべて憲法違反だということは、私は憲法の解釈論としては正しくないのじゃないか」(1957年5月7日、参議院予算委員会)。

また安倍政権では2016年3月18日の参議院予算委員会で横畠祐介内閣法制局長官が「我が国を防衛するための必要最小限度のものにもちろん限られるということでございますが、憲法上全てのあらゆる種類の核兵器の使用がおよそ禁止されているというふうには考えておりません」と見解を示している。

したがって、もし世論が容認するなら、そして米国や世界の主要国がそれを容認して、制裁措置を取らないならば(インドはそういう地位にある)、日本は米国あるいは第3国から核ミサイルを購入したり、あるいは自主開発することができる。

日本はウラン(ただし輸入)、プルトニウムも持っているので、わりと短期間で核兵器を開発できるし、中距離弾道ミサイルも短期間で開発できる。トマホークを米国から購入できれば、これをイージス艦、あるいはイージス・アショアから発射することもできる。

しかし、トランプが日本の核武装を認めると言っても、ワシントンのエリート層の大半はこれに反対するだろう。米国の政策決定層の大半は、かつて自分が原爆を投下した当の相手、日本が核武装することを恐れているし、安全保障面では日本を自分に依存させて、基地を自由に使いたいからである。

米国の同意が得られなければ、核武装をしようとする日本は北朝鮮のように様々の制裁措置を食らうだろうし、ウラン輸入を止められて発電にも差し支えることになるだろう。

ワイルド・カードとして、ロシアと核兵器を共同開発する奇手もある。しかしこれは、米国を敵に回す可能性が高い禁じ手であろう。