個人資産の増やし方、
はっきりいって難しい

このようにアクセスが難しいことに所以する利益、もしくは人がまだ見つけてない資産を見つけてしまう早期発見型運用。このパターンは両方とも広義の意味での「アルファ運用」と呼ばれていて、比較的堅実にお金を増やせるパターンと言える。また、この運用は1のベータ運用ほど市場の上げ下げで儲けが上がったり下がったりしにくい。元々誰も知らない儲けであり、「運」に頼っていないからこそ、なくなりにくいのである。

一方でアルファ運用の難しいのは、そもそもそのような運用機会を見つけるのがめちゃめちゃ難しいのに、すぐに誰かに真似されて利ザヤが減ってしまうことだ。大昔、カリフォルニアのゴールドラッシュの時、初めて発見した人に比べて後追いしてきた人は確実に儲けが少なかったはず。きっと形や色がイマイチだったり、クズダイヤしか残っていなかったりしたはずだ。

エルメスのバーキンもその後たくさんの人がその「アルファ」に気付き、転売市場が急発展。最近はエルメス本店で買う正規のお値段も高くなった上に、取引量が増えて利ザヤがどんどん小さくなった。エルメスの正規店で買って、日本で転売しても同等の値段で売れるか売れないか程度に収まっている。

エルメスのケリーバッグもバーキンも女性の憧れ Photo by Getty Images

結論としてお金を増やすということは実は相当難しい。「じゃ、資産運用の仕事は何?」と言われそうだけど、資産運用のお仕事は上の例でいうところの1ではない。ただ闇雲に市場リスクを取るのは博打と同じだと見なされてしまう。一方でアルファ運用は「神の取引」のごとく推奨される。世界中の運用のプロがこのアルファを見つけ出そうと切磋琢磨している。誰もまだ見つけていない旨味を誰よりも早く見つけるのはまさに毎日マーケットを見ているプロならではのお仕事。エルメスのアルファをいち早く見つけたのが「移動のプロ」の客室乗務員であったのと同じロジックだ。

ただし、このアルファ運用はかなり希少なので、個人投資家がアクセス出来ないことも多い。小さな市場でプロが少数の上顧客に提供して在庫切れになるパターンが殆ど。つまりはかなりの高額資本を持つ機関投資家がさらに儲かり易い仕組みになっている。大手機関投資家には、このようなアルファ運用がいち早く紹介され、アクセスも可能となるが、個人投資家にその情報が回ってくるのは通常であれば後回しになる。また情報が回って来たとしても一口5億円以上などと金額に下限設定があったりして投資アクセスは容易でない。

よって、友人や親戚に「お金の増やし方を教えて」と言われても言葉につまってしまう。私自身も金融機関に勤める社員として様々な個人運用規制があるとは言え、基本的に金融取引でお金を増やせたのは1の「博打」パターンしかないというお粗末な現状なのだ。しかも、本当に住もうと思って買った小さいマンションがたまたま値上がりしただけの素人顔負けの投資状況である。