10月25日に公開になる映画『108~海馬五郎の復讐と冒険~』は、爆笑コメディでもあり、エロチシズムも満載、シニカルに世相も写し出した松尾スズキワールド炸裂の映画。R18指定になっていることについては「松尾ワールドだもんね」と驚かずとも、そのヒロインを中山美穂が演じると聞いて、驚いた人も少なくないのではないだろうか。

15歳でデビューしてから34年、ますます美しさに磨きをかけている中山さんに、今の率直な思いをきいた。

インタビュー・文/菊地陽子 撮影/山本倫子

「必ずいい作品にします」
松尾さんの言葉で腹を括りました(笑)

最初に、この映画の構想を松尾スズキさんの口から聞いた時、「ぶっ飛んでいるなぁ」と思ったという。喜劇人・松尾スズキさんが長編映画4冊目にして初めて監督・脚本・主演を務めた映画『108〜海馬五郎の復讐と冒険〜』で、中山美穂さんは、主人公の脚本家・海馬五郎の妻で元女優の海馬綾子を演じた。

「私自身、それまで松尾さんとは面識はなかったんです。たまたま同じ時期に京都で、同じドラマの撮影をしていて。共演シーンはなかったのですが、監督が間を取り持ってくださって、出演者のみんなでご飯を食べたことがあったんです。その時に松尾さんが、『奥さんに逃げられた夫が、腹いせに女と乱行する映画の準備を進めています。主演は僕で是非中山さんにも』とおっしゃっていて、私、おかしくておかしくてゲラゲラ笑ってしまって(笑)。

共通の友人に、『すごく面白そうな映画の構想を聞いた』と話したら、『絶対に2人は合うと思う。一緒に仕事をするべきだ』と太鼓判を押されたんです。彼女にLINEで繋げてもらって、直接『あの映画のお話、やってみたいんですが』とお伝えしました」

その時は、もし出演するとしても、まだ自分がどんな役をやるのか、想像もつかなかった。ただ、「面白そう!」と心が動いたから、迷わず行動に移したかっただけなのだ。それは、10代の頃から自分ではない“誰か”になることに取り憑かれてしまった“役者”の、本能のなせる技だったのかもしれない。 

ほどなくして、脚本が送られてきた。読んでみると、その描写のあまりの過激さに、「私が出演して大丈夫かしら」と不安がよぎった。

「やりたいんですよ。すっごくやりたいんですけど、いわゆる濡れ場的なシーンも描かれていたので、私が綾子を演じることで、逆に、作品のイメージを壊すんじゃないかとか、もしそういうシーンばかりが面白おかしく取り沙汰されたらかえって申し訳ないな、と思ったんです。それで、松尾さんと直接お話をする時間を作っていただきました。そうしたら、『悩むのはわかりますけど、大丈夫です。必ずいい作品にします』と松尾さんが力強くおっしゃったので、私も腹を括りました(笑)」

中山美穂(なかやま みほ)/1970年生まれ。東京都出身。1985年、15歳でドラマ・CDデビュー。同年、日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞。女優・歌手として活躍しながら、1995年岩井俊二監督『Love Letter』でブルーリボン賞ほか、各映画祭で最優秀主演女優賞を受賞。1998年には竹中直人監督『東京日和』で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞する。その後も、映画『サヨナライツカ』(2010年)『新しい靴を買わなくちゃ』(12年)『蝶の眠り』(18年)などに出演。16年には『魔術』で初舞台を踏んだ。19年12月4日に約20年ぶりとなるアルバムリリースも予定している。