「狐男」との恋を着回しページで展開した、光文社の雑誌「CLASSY. 2019年10月号」。ネット上ではこのストーリーについて、人間と動物など異類との結婚をモチーフにした昔話の類型である「異類婚姻譚」ではないか、と話題になった。

この着回しストーリーについて、「異類婚姻譚として新しい」と指摘するのは、昔話をフェミニスト目線で読み解く『日本のヤバい女の子 静かなる抵抗』の著者である、はらだ有彩さん。彼女に、この着回しストーリーに込められた昔話の記号を解説してもらった。

※以下、はらださんによる寄稿。

先日、光文社の雑誌「CLASSY.」の「着回しDiary」がインターネットを騒がせた。「CLASSY.」の着回し企画が異色なのは今に始まったことではない。主人公の職業が棋士だったり、あまり裕福でない劇団員だったり、やたらと込み入った設定が過去に何度も話題になった。

しかし今回の10月号「新しいデニムの教科書」はひときわ変わっている。主人公が一ヶ月の間に、狐と出会って恋に落ちるという筋書きなのだ。完全に民俗学でいうところの異類婚姻譚ではないか。

「昔話」は人間のための物語だ。自分ひとりでは太刀打ちできないもの、「不可解なもの」と折り合いをつけるために、人間が語り継いできた。だとすれば、私たちはこの新しい説話の中で、一体何と折り合いをつけようとしているのだろう。

「狐男」にさほど驚かない主人公

主人公は大手通信会社に勤務する阪井まどか・30歳。入社8年目の仕事はそこそこ楽しい。休日に仕事絡みのボランティア活動に参加できてしまう程度には、まどかには愛社精神があり、打ち込むべき趣味がない。

9/1、環境保全のボランティア活動のために山で作業していたまどかは不思議な声を聞く。

「CLASSY. 2019年10月号」より

「ブナは森の女王なんだよ」

振り返ると見知らぬ青年が立っていた。甚平に下駄という古風な装いに、狐の耳と尻尾。不思議な青年はまどかに優しく微笑みかけた。

翌9/2、出社したまどかは上司に新しいメンバーを紹介される。他部署から異動してきた青年の名は山本。まどかは「昨日見た狐に似てる」と思いつつ、深くは追求しない。

9/4、オカルトに詳しい友人の康輔は「本当に狐だとしたら、なんか企んでいるに違いない」と訝しむ。山本の凶悪性を疑い距離を取ろうとするまどかは、しかし彼と同じチームになってしまう。