クジラ、ウナギの次は「マグロ」が食べられなくなる可能性

すでに絶滅危惧種に指定されている
松岡 久蔵 プロフィール

ある「圧力団体」の存在

それにしても、なぜ米国はマグロの漁獲にこれほど反対するのだろうか?

現地で会議に参加した関係者によると、「米国では、クロマグロは主にスポーツフィッシングの対象のため食べ物としてみる意識が希薄なこともあるが、それ以上に、豊富な財源をもつ環境保護団体が、現地で直接交渉団に圧力をかけられるほど米政府に深く食い込んでいる」ことが理由だという。

その環境保護団体とは「ピュー慈善財団」。世界有数の総合エネルギーメーカーである米国スノコ社の創業者一族によって設立され、ワシントンに本部を置く。

環境だけでなく、文化や教育など幅広い政策分野について調査・政策提言を行っており、年間活動費は数百億円規模。日本の業界団体の1億円にも満たない活動資金からすれば、桁違いの超強力ロビー団体だ。大統領選などに際し、大規模な世論調査を行う「ピュー研究所」の運営母体としても知られる。

 

先の関係者によると、今回のWCPFCにおいても「(ピュー慈善財団のスタッフは)米国側の意思決定メンバーのミーティングにも参加しており、まるで政府の一員のようだった」。

また、先の自民議員も「米政府がクロマグロの保護について大きな関心を抱いているというよりも、この団体がロビ-活動として政府や与党に資金面での援助を行っていることが、米国が日本に反対する大きな原因だろう」と分析する。同議員は「クロマグロを第二のクジラにしてはいけない」と危惧している。

やはり食べ過ぎている

もっとも、クロマグロの資源量減少が深刻を極めているのも事実だ。

水産庁によると、繁殖能力のあるクロマグロ親魚の資源量は1961年の約17万トンをピークに減少が続いており、2010年に約1万2000トンと激減。2014年には国際自然保護連合(IUCN)から絶滅危惧種に指定されている。

現在、日本人は世界のクロマグロの約8割を消費しているとされ、各国から批判されても反論できない立場にあるのだ。

なぜここまでクロマグロ消費が増えたのだろうか? それは、残念ながら「日本人が食い散らかしてきたから」としか言いようがない。水産庁関係者がこう解説する。

「スーパーと回転寿司チェーンが増えたことにより、1980年ごろから2000年代をピークにクロマグロの需要が急拡大したことが原因です。

高級寿司店で提供される高価格帯の生鮮マグロと違って、冷凍クロマグロは価格を低く抑えられるため、一般消費者が手の届く商流に乗りやすかった。また冷凍クロマグロは刺身や寿司として売られるので、賞味期限は短期間に限られるのですが、とにかく店頭に刺身を常に並べておきたい量販店や回転寿司チェーン側の要望に商社と漁業者が応えた結果、瞬く間にクロマグロの資源量は激減していったのです。

日本では食品全般でロスが多いことが問題となっていますが、当時はそういう意識も希薄で、歯止めがかからなかったことも拍車をかけました」