漫画界の巨匠・かわぐちかいじも唸った、大物作家の「ヤバい世界観」

かわぐちかいじ「人生最高の10冊」

魅力的な登場人物たち

幼少期から漫画には興味があったんですが、漫画家を志す上での大きな転換点となったのは、永島慎二さんの『漫画家残酷物語』でした。

小学生の頃は子ども向けの、手塚治虫さんや横山光輝さんの冒険ものの漫画を読んでいました。それが中学生になって、通学路の近くにあった貸本屋さんで大人向けの漫画を読むようになったのです。その中にあった永島さんの作品で様々な絵のタッチで描かれていた、東京で漫画家生活を送る青年たちの姿が、悲喜こもごもながらも非常に魅力的でした。

 

私自身も東京で漫画家になりたいと思いましたし、大学に行くなら東京に行かせてやると親が言ってくれたので、受験勉強を頑張るモチベーションにもなりました。今の道を選んだのは、永島さんの存在が大きかったですね。

されどわれらが日々―』は学園紛争を正面から取り上げた小説です。読んだのは高校生の時で、当時の大ベストセラーでした。

東京に行こうと意識したのは永島さんがきっかけでしたが、では、大学生とはどんなものだろうかと考えたときに、その具体像を学ぶことができたのがこの作品です。生活の描写などが克明で、大学生の実態が色濃く伝わってきました。

また、政治とはどうしても自分と縁遠いものという感覚があったのですが、登場人物は世の中からの裏切りを、それぞれ自分のこととして受け取っていて、大学生は世の流れの中にいるすごい大人なんだと感じました。

ヒロインの節子の人物像も魅力的でした。行動は謎めいているけど、眼の前ではなくずっと遠くを凝視している大人の女性という成熟感に惹かれました。自分も大学に入って成長しようと思うとともに、大学で自分の節子を探したい、とも感じていました(笑)。