認知症の父と介護する息子…超高齢化社会の「家族の姿」を描く難しさ

『老父よ、帰れ』作者の久坂部羊が語る
久坂部 羊 プロフィール

──好太郎が度々、父を見て「自分も老いたらこうなるのか」と不安をいだくのが印象的でした。また終盤では在宅介護に留まらず、「看取り」の問題にもテーマは進みます。

ネガティブだけど本当のことも、きちんと語らないといけません。「死」について、私は医療者として常に考え、現実に見てきました。死や老いへの悩みを生むのは、期待値と現実の差です。

 

つまり、期待を下げると、もっと人は生きやすくなるんです。欲望や執着を少なくすること。感謝し、足るを知ること。そして、認知症になると、そもそも「期待値」に苦しむことがなくなります。死への不安に囚われずに死ぬのは神が与えてくれた恵みでもある。あとは、子や家族、周りがそれをどう受け入れるか。

小説の中で好太郎が戸惑うのは、「自分の都合」を父に押しつけているせい。勝手な期待が、さらに自らを苦しめる。「自分の都合」を抑えて、他者への感謝を身につけるようになることが必要なんです。それは、この小説のテーマでもあります。(取材・文/伊藤達也)

『週刊現代』2019年9月28日号より