止められない「和牛流出」なぜオーストラリア産が世界を席巻したのか

実は数十年前から始まっていた
時任 兼作 プロフィール

一日も早く新法を

農産物の輸出振興を図る日本政府は現在、2017年に192億円だった公式ルートによる牛肉の輸出を19年までに250億円に拡大する目標を掲げ、中国政府との交渉に当たっている。だが、中国側は輸入拡大を大きな外交カードとみており、交渉は容易に進みそうにない。

その中国が頻発する不正盗用をあえて見逃していることは看過できないが、もっともこれまでの経緯を見ると、中国ばかりを責めるわけにはいくまい。これまでの日本の対応が甘すぎた、という側面もある。政府関係者が語る。

「3月の事件が発覚した際、江藤拓首相補佐官(当時)は、現在は明確に禁止されていない和牛の流出を防ぐ法整備を急ぐ考えを示したが、もっと前にやっておくべきことだった。国際社会の動向に疎すぎる。少なくとも、EUが動き出した際には、日本も対応しておかなければならなかった。そうしていたら、1995年の流出などは防げたはずだ」

 

もっとも、振り返れば日本も、欧米から数々の知的財産を盗用してきた。その事実を踏まえると、たとえば「日本のスコッチ」がいまあるように、「オーストラリアの和牛」が世界で親しまれていることも致し方ないのかもしれない。

とはいえ、いつまでも過去に拘泥している場合ではない。必要なのは一日も早く新法を制定し、保護制度を厳格に実施することだ。このままでは日本の国益が損なわれるばかりである。