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10分で入門! ホームランが飛ぶ理由も解明した「大著」全編を解読

理系の教養ニュートンの大古典に挑む!
サイエンスの古典中の古典、アイザック・ニュートンの『プリンシピア 自然哲学の数学的原理』。長く入手困難だった日本語版がブルーバックスとして刊行され、このほど全3巻が完結した。
これを記念して、この大著を「読んだフリ」できる秘策を京都大学の鎌田浩毅教授が伝授。でも伝授されているうちに通読したくなってしまうかも……。

出版当時から難解と言われた大著

現代社会は科学技術なしには語ることができない。その基礎を作った物理学者アイザック・ニュートン(1642~1727)の主著の邦訳(初刊1977年)が復刊された。

正式の名称は『自然哲学の数学的原理』(Philosophiæ Naturalis Principia Mathematica)であり、『プリンシピア』(Principia)と世界中で略称されている。

『プリンシピア』の初版はラテン語で書かれた全3巻の大作で、科学書の古典の筆頭に挙げられる。今をさかのぼること300年以上前の1687年、ニュートンは宇宙を動かす力学の一般法則を公表した。

 

本書によって、万有引力をはじめとして古典物理学の基礎的な事項が初めて定式化され、後世に多大なる影響を与えることになる。現在、ケンブリッジ大学から全文がネット公開されている。

プリンキピアケンブリッジ大学所蔵の『プリンシピア』より

出版当時から難解と言われた『プリンシピア』だが、今回のブルーバックス版は42年後の1729年に刊行された原著第3版の英訳(モット訳)の、カジョリ改訂版を3冊に分けて和訳したものだ。

訳者、故中野猿人氏は東京帝大理学部天文学科を卒業し気象庁に勤務していた物理学者で、内容そのものの理解を目的として翻訳し、各巻末に大量の訳者注を付けた。そして原典では省略された証明、また微積分を用いた別証明、さらに現在から見た物理的概念の解説などを丁寧に補足した。

『プリンシピア』は「序論」と「本論」3編で構成されている。

定義と公理を述べた序論では、力学上の基礎的な諸概念を説明する。たとえば、高校物理でもおなじみの「質量」・「運動量」(ブルーバックス版第1巻23ページ及び365ページ注)、さらに「力」(同24ページ)をはじめとして、「絶対時間」・「絶対空間」・「絶対運動」(同30~32ページ及び367~368ページ注)などが厳密に定義される。

ちなみに、ニュートンが使った用語は今と若干異なるが、それらは訳者の詳細な注を参照すれば容易に理解できよう。

次の項目「公理、あるいは運動の法則」では、「運動の3法則」「力の合成・分解の法則」など、ニュートンが確立した古典物理学の基本概念と方法が述べられる。

ニュートンの運動の3法則

「運動の3法則」とは物理の教科書で「ニュートンの運動の3法則」として知られているもので、「慣性の法則」「運動方程式」「作用・反作用の法則」の3つからなる。一言で表せば、「どんな力が働いたとき、どのように動くか」を明らかにした法則である。

これを逆に使えば、「物体がこんな動きをしていた場合、そこにどんな力が働いているのか」に答えてくれる。つまり、科学には「予測と制御」という重要な機能があるので、「運動の3法則」を知っていれば、見えない未来が予測できるというわけである。

なお、高校の勉強から遠ざかって久しい読者も少なくないと思うので、ここでおさらいしておこう。これさえ押さえれば、『プリンシピア』を読んだ(冒頭だけでも)と胸を張ることができるからだ。