W杯開幕、ラグビーが「日本人の意識」を変えるのかもしれない

元日本代表が語る「ラグビーの魅力」
山川 徹 プロフィール

排除ではなく、融和を

W杯日本大会について、大西は「ラグビーに限って言えば、勝敗が重要なのは当然なのですが」と前置きして、続ける。

「でも、W杯は、ぼくたちに様々な可能性をもたらしてくれるはず。試合はたった80分で終わりますが、他国の代表選手やスタッフは2ヵ月近くを日本で過ごす。来日したファンの人たちも1、2週間かけて、ひいきのチームを応援するでしょう。

W杯は、ラグビーを抜きにした時間が圧倒的に長いんです。ぼく自身もフランス大会で様々な国の人と交流した経験が、新たな自分を見出すきっかけになった。応援するファンの人たちも多様な背景を持つ人たちと触れあって、新たな価値観を知る機会にしてほしい」

しかしグローバル化による在留外国人増加への反動か。日本社会にはいまだ排他主義的な雰囲気が漂っている。

「だからこそ、これからの日本は、排除ではなく、融和を目指していく必要があるのではないでしょうか。そうした意識を変えるきっかけになるのが、ラグビーに限らず、スポーツの役割だと思うのです」

排除ではなく、融和を――。

大西が、そんな考えに至った原風景がある。

大阪の啓光学園高校時代(現常翔啓光学園)、ニュージーランドに遠征した。

ニュージーランドにはちょっとした広場や空き地にも芝生が敷かれ、子どもたちが楕円球と戯れていた。

ニュージーランド人の子どもだけではない。トンガやフィジー、サモアなど南太平洋の島嶼国家から移住したと思しき子どもたちも、先住民マオリやアジア系の子も一緒にボールを追っていた。

 

そんな日常を前にした大西は、ニュージーランドはこんなにも外国人を受け入れているダイバーシティの国なのかと驚いた。様々なルーツを持つ人たちと融和し、多様な価値観に支えられているからこそ、オールブラックスは強いのかもしれない、と感じたのである。

生活の一部にラグビーが溶け込んだニュージーランドの景色が、大西のラグビー観を形づくる原点となった。

母国で開催される一生に一度とも言われる世界的イベントを直前に控え、大西は思うのである。W杯をきっかけに、ラグビーが持つ本質的な魅力をたくさんの人に知ってもらえれば、と。