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その手術、ホントに必要? 70歳以上の老親を苦しめないために

医者の言いなりでは、きっと後悔する
医者が患者を第一に考えて、手術や薬を勧めてくると思ったら大間違い。「医者の判断に口を出すのは憚られる」と思う人もいるかもしれないが、そんな風に遠慮していたら、自分が割を食うことになる。

軽くみてはいけない「5歳の差」

「70歳と75歳、75歳と80歳では体力もずいぶんと違います。千代田区が発表した『要介護者の実態調査成績』という資料を見ると、要介護者全体のうち、87%が75歳以上で、74歳以下は13%しかいない。わずか5歳の差と思われるかもしれませんが、75歳を超えるとがくんと体力が落ちるということです。

70歳を超えたら、自分の体に手術を受ける体力があるかどうか、そのリスクについてもしっかり考えておかなければなりません」

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こう話すのは、公益財団法人骨粗鬆症財団の折茂肇理事長だ。若い頃には問題にならないわずかな年齢差が、高齢になると大きく影響してくる。70歳、75歳、80歳の「5歳の差」を軽く見てはいけないと折茂氏は指摘する。

 

一例を示そう。軽い外傷を原因に脳の表面に血が溜まる「慢性硬膜下血腫」。高齢者に多い病気の一つだが、川崎医科大学の研究によると、治療を受けた後、自宅に戻れず介護施設などに入所する人の割合が、70歳未満は9・2%だったのに対して、70歳以上では22・7%、80代で26・2%、90代では38%にのぼるという。同じ病気でも、年齢によって手術後のリスクはここまで違うのだ。

東邦大学医療センター大森病院・がんセンター長の島田英昭氏は、

「基本的には、75歳くらいまでは、体力や健康状態によほどの問題がなければ、ほとんどの手術は問題なく受けられると考えていい。しかしそれ以上の年齢の場合は、手術のリスクが上がっていくと考えておいたほうがいいでしょう」

として、こう続ける。

「手術のリスクについてはある程度の情報を調べることができますが、多くの情報は75歳以下を前提とした情報であり、それ以上の年齢の場合、手術リスクについての客観的なデータは多くはありません。

いうまでもなく80歳以上となると、さらにデータが不足します。つまり高齢になればなるほど、リスクを判断する材料が少なくなるということです。

近年80歳でも元気で、手術を受けても大丈夫だろうという方もいます。ただ、原則として、75歳を超えたら、心臓や呼吸器、肝臓、腎臓などの状態を医者に慎重に診てもらいながら、手術が可能かどうかを検討する必要があります」

島田氏は、手術が長時間に及ぶもの、たとえば胸部食道がんの手術や、拡大肝切除、あるいは膵頭十二指腸切除術などは、75歳を超えたら医師や家族とよく相談し、場合によっては手術以外の治療を検討することも選択肢として考えたほうがいいという。