〝1ヵ月に35日雨が降る〞屋久島を訪れたのは植物好きのアートディレクター黒田益朗さん。緑に苔むした屋久杉の森を歩き、キュートな子鹿やウミガメに出会ったら、ワイルドすぎる海中温泉も体験! 悠久の時と雨に育まれた、美しい水の島へ。

目に映るものすべてが、
太古の緑で覆われている

「雲の存在感がすごいですね。島が全身で水蒸気を放出しているよう」

鹿児島から高速船で屋久島へ向かった黒田益朗さんは、船の窓から島を眺め、そうつぶやいた。見れば、丸い島の真ん中あたりから、むっちりと分厚い雲が湧き上がっている。

屋久島に着いたら、樹齢1000年超えの屋久杉を見に行かなくっちゃ。美しい森が広がる〈ヤクスギランド〉では、何世代にもわたる樹木や苔と清流が絡み合い、人知の及ばない景色を創り出している。

アートディレクターであると同時に、ここ数年はガーデニングや景観デザイン、はたまた他の木にくっついて育つ「宿り木」の調査にも奔走している黒田さん。

「植物に惹かれてしまう理由が、自分でもよくわからないんです。でも、理由も目的も到達点もないまま〝ただ惹かれてる〞という状態に浸るのも、それはそれで幸せかなって」

日本にある約1700種の苔のうち、屋久島には690種以上の苔が生息。その美しさに惚れ惚れ。

そんな植物好きが旅の目的地に選んだのは、1993年に日本初の世界自然遺産に登録された屋久島。島の約90%が森林に覆われ、島内だけで690種類もあるという苔から樹齢1000年以上の屋久杉まで、多くの自生種が生息する。

また、標高1000m超えの山も多く、九州地方の高い山の1位から8位までが屋久島にあるそうで。“洋上アルプス”と呼ばれるこれらの山岳に、暖かな黒潮の海から吹く湿った風がぶつかって、一年じゅう大量の雨が降る。作家の林芙美子は小説『浮雲』で「屋久島は月のうち、三十五日は雨」と書いたけれど、この雨こそが屋久島のあらゆる動植物の生命の源になっているのだ。