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幸福経営のトレンド
前野 隆司 プロフィール

幸福はどう測る?

何度か、満喫、感動、共感、フロー、幸せという単語を並べてきました。これらはどんな関係にあるのでしょうか。

幸福学から見ると一目瞭然です。

幸福学というのは、幸せについての学問です。哲学者も幸せについて語りますが、ここでの基本は心理学。欧米では、well-being study(ウェルビーイング学)ないしはhappiness study(幸せ学)と呼ばれます。ウェルビーイングとは、直訳すると、よいあり方。辞書で見ると、健康・幸福とあります。つまり、身体のいい状態が健康、心のいい状態が幸せ、というわけです。

つまり、心の幸せ全般に関する学問ということです。心理学的ウェルビーイング(psychological well-being)と言われることもあります。

それから、ポジティブ心理学(positive psychology)という分野もあります。心理学と名付 けられていますが、心理学者のマーティン・セリグマンや、フローの研究者であるミハイ・チクセントミハイらが始めた分野で、幸せについての研究の成果を一般の人が使うための分野と考えればいいのではないかと思います。

先ほどのウェルビーイングの研究が基礎幸福学だとすると、ポジティブ心理学は応用幸福学です。

幸福学によると、幸せには、「いまは楽しい気分/つまらない気分」のような短期的な幸せ/不幸と、「私の人生は満ち足りていた/挫折だらけだ」のような長期的な幸せ/不幸があります。

前者を感情的幸福と呼びます。ポジティブな感情とネガティブな感情をアンケート調査で調べることにより、感情的幸福を測れることが知られています。

後者は、たとえば、エド・ディーナーが開発したSWLS(satisfaction with life scale:人生満足尺度)というアンケートにより測れることが知られています。

 

古代ギリシャでは、幸せは、ヘドニア(Hedonia)とユーダイモニア(Eudaimonia)に分かれると言われていました。これらも、短期的な幸せと長期的な幸せに似ているので説明しておきましょう。

ヘドニアは目の前の快楽による幸せ。感情的幸福に近い概念だと言えるでしょう。

一方のユーダイモニアは、努力を重ねた結果としての、利他的で意義のある生活をしている人の幸せだと言われています。人生の満足に近いと思いますが、目の前の快楽によって人生の満足を感じている場合にはヘドニアと言えますので、必ずしも人生の満足と一致するわけではありません。とはいえ、目の前の快楽による幸せではないという点で、長期的な幸せの一種だと言ってもいいと思います。

むしろ、ヘドニアとユーダイモニアは、地位財型の幸せと非地位財型の幸せに対応していますので、そちらについても述べておきましょう。

地位財とは、金、モノ、地位等のように、他人との比較で優位性を感じることのできる財のことです。ダニエル・ネトル(『目からウロコの幸福学』オープンナレッジ、二〇〇七年)によると、地位財型の幸せは長続きしません。一瞬は幸せになれますが、あっという間に元に戻ってしまうというわけです。はかない幸せです。ヘドニアですね。

一方の非地位財は、他人との相対比較とは違った絶対的価値を持つ財。安全、健康、努力の結果得られた強み、愛情、楽観性、人の目を気にしないことなど、その多くは心理学的ウェルビーイングです。ユーダイモニアです。

短期的幸福と長期的幸福の話に戻りましょう。

私の研究室での調査の結果、感情的幸福と人生の満足はかなり相関が高い傾向がありました。つまり、おおざっぱに言えば、短期的幸福と長期的幸福は比例する傾向があるということです。