ビジネスと人生を豊かにする鍵は「感動」にあった!

幸福経営のトレンド
前野 隆司 プロフィール

ちなみに、ラッセル・クロパンザノらの研究によると、従業員の幸福度は仕事のパフォーマンスに影響しますが、従業員の仕事への満足度はパフォーマンスにあまり影響しないことが知られています。従業員幸福度の方が、従業員満足度よりも大事だということです。単に儲けるだけではなく従業員満足度が重要と言われている昨今ですが、実は、従業員幸福度の方が大事なのです。単に、従業員が仕事に満足したり福利厚生に満足したりするだけでなく、ライフもワークも含めたトータルの幸せが大事だということです。

この話も、人間中心というあり方が、人間の表面的な満足中心から、人間の内面的な幸せ中心へと移行しつつある現代のトレンドと同じ方向性を示しています。

 

満喫、感動、共感、フロー

拙共著『無意識と対話する方法』(ワニブックス、二〇一七年)に書きましたが、討論(ディベート)から対話(ダイアログ)へという流れも似ています。論理で戦い打ち勝つ世界観から、判断を保留して傾聴し他人を認め合い感性を出し合う世界観への変化。より、人間らしさの深部にまで考えを巡らせ、生きるすばらしさのシェアへと向かうあり方。

つまり、大げさに言うと、二一世紀は、真の人間中心の時代になるべきだと思うのです。ユヴァル・ノア・ハラリは著書『サピエンス全史』(河出書房新社、二〇一六年)の中で言いました。農耕革命も産業革命も、人類を幸せにしなかったと。人類は、より忙しくなり、自分が中心であることを忘れたのです。しかもその伝統が、何万年にもわたって、人類を不幸にしてきました。

テクノロジーの進展した現代社会において、生きるための仕事(たとえば農林水産業)に携わる人の数は減少しています。これは何を意味するかというと、私たちは、世界のトータルで見ると、生きるためにあくせく働かなくてもいいほどにすでに豊かなはずだということです。ところがそうなっていないのは、世の中があまりに非合理的だからです。配分がうまくいっていない。それから、競争による無駄、格差による無駄、対立による無駄だらけなのです。

現代人は、効率化、合理化、売り上げ最大化、そして、他者に打ち勝って生き残ることのために優れた社会システムを作ってきました。ところが、皮肉なことに、そのための競争や格差のコストが肥大化しすぎて、あくせくと働かざるを得ない。そのあまり、自分や仲間や社会のみんなの幸せについて考えることを忘れていたというわけです。

もっと、人間を中心に考えましょうよ。単に、ユーザーとしての人、経験するための人ではなく、生活を満喫し、感動し、共感し、フローを感じ、幸せになる人を、中心に。

これが、これからの時代の向かうべき方向だと思うのです。

もちろん、揺り戻しもあります。逆に向かう圧力です。たとえば、民族主義、国家主義、保護主義などなど。

しかし、「自分たちだけの幸せ」を考えるのではなく「みんなの幸せ」を考えるなら、民族を超え、国家を超え、企業を超えて、みんなが生き生きと生きる社会を目指すべきだと思います。

だから、満喫、感動、共感、フロー、幸せがこれからの時代に必要なのです。