2019.09.24
# ETF # 香港 # 投資信託

「デモ」か「中国マネー」か? 翻弄される香港のジレンマ

市場を支配する大国の「アメとムチ」
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

香港という名のジレンマ

もともと100年の歴史を持つ香港の証券取引所と、1990〜91年にようやくオープンした上海や深セン証券取引所の間には、「格」の違いがあった。

香港は歴史的に英国流のコモン・ローや会計基準などが整備された開放的な国際金融センターで、株式市場もグローバルな機関投資家中心の洗練された市場だ。一方、上海や深センは、上場企業の開示やガバナンスもまちまちで、売買の中心は個人投資家。彼らが時折投機的に動いて、激しい株価変動を生むことで知られてきた。

市場黎明期の1992年には、上海総合指数が99日間連続して高騰したり、1日で倍以上になったりするという、他ではあり得ないようなことも起きた。

中国株の門戸開放も、外国人が香港に上場するH株が買えるようになったのが1993年、中国政府から「適格」とお墨付を得た海外の機関投資家がA株に投資できるようになったのがようやく2002年と、比較的最近のことだ。

 

しかし、中国株は驚くべき速さで大きくなり、成熟しつつある。今や、その時価総額は6.5兆ドル(約700兆円、IMF8月末データ)と、日本を超え米国についで世界第2位だ。

グローバルファンドへの組み込みが増えれば、世界中の投資家から中国企業に対する開示要求も更に強まるだろう。中国政府もこれまでのようなあからさまな株式市場への介入は手控え、ESG(参考記事:フェイスブック株価を下落に追い込んだ「ESG投資」の仕組み)についての開示を2020年を目処に中国企業に要求するまでに、やり方が垢抜けてきている。

この6月からは上海とロンドンを結ぶ「ストック・コネクト」も始まった。こうした中国本土市場のグローバル化は、香港にとってはこれまでの競争優位を揺るがすリスクだ。

デモたけなわの7月、「中国版ナスダック」と言われるハイテク企業向け市場「科創板」も上海で新設された。これで赤字企業でも上海に上場出来ることになり、香港にとっては上場予備軍のベンチャー企業をごっそり上海に持っていかれるおそれも出てきた。

中国は、こうした「アメとムチ」の両遣いで、今後も香港の資本市場への影響力を強めていくだろう。

「中国ではない」と言いたいのに、香港の繁栄は中国なしにはありえないーー香港の抱える矛盾と悩みは深い。

SPONSORED