2019.09.24
# 香港 # 投資信託 # ETF

「デモ」か「中国マネー」か? 翻弄される香港のジレンマ

市場を支配する大国の「アメとムチ」
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

中国「A株」と香港を結ぶ「ストック・コネクト」

「指数」と中国買いがどう関係するのかーーここで、ちょっと説明が必要かもしれない。

株式投資には「パッシブ」と「アクティブ」という二つのスタイルがあって、どちらにも株式指数が使われる。

「パッシブ運用」は、株価指数をなぞる運用スタイルだ。

例えば東証株価指数(TOPIX)には2000銘柄以上が含まれているが、その構成比が「トヨタ3%、三菱 UFJ グループ2%、ソフトバンク 1.5% ……(以下2000銘柄以上が続く)」だったとすると、1億円のパッシブファンドは、トヨタを300万円、MUFGを200万円、ソフトバンクを150万円、という具合に、ファンドの構成が指数と全く同じになるように投資して、それを維持しながら運用する。これは、基本的には市場に丸ごと投資するのと同じだ。

Photo by Gettyimages

一方、ファンドマネジャーが株式を自ら選択する「アクティブ運用」の場合は、「円高だからトヨタへの投資はやめておこう」とか、「今のソフトバンクは勢いがあるので多目に投資しておこう」などといった目利きが入るので、ファンドの構成は指数とは違ってくる。それでも株式指数は「ベンチマーク」(尺度)と呼ばれて、そのマネジャーに市場を超える投資リターンを生む腕があったかどうかを測るために使われる。

近年では手数料が割安なインデックス運用に世界の投資マネーが流れ込んでいる。その元になる「指数」を作っているのが、MSCIやFTSE ラッセル、S&Pダウジョーンズといった指数提供会社だ。東証や日経新聞の指数ライセンス事業もこれに含まれる。

 

一方、iShareで知られるブラックロック、バンガード、NEXTを提供する野村証券などの運用会社は指数会社にライセンス料を払い、ETF(上場投資信託)と呼ばれる数多くのインデックス連動ファンドを提供している。手数料が比較的安いのが特徴で、機関投資家だけでなく個人でも簡単に買える。ETFには超大型ファンドも多く、700種類ものETFを運用するブラックロックには1兆ドルを超える顧客資産が集まっている。

さて、中国A株の話に戻ろう。

今年から指数提供会社のMSCIとFTSEラッセルが、グローバルな指数の中での中国A株の組み込み比率を段階的に引き上げているのだ。例えばMSCIの「MSCI新興国指数」は、これまで0.7%だった中国A株を11月までに3.3%に引き上げる。

なんだ、たった2、3パーセントの差かと思われるかもしれないが、母数がデカイ。

ETF.comによれば、新興国の株式だけでも、57のETFで1600億ドル以上が運用されている。指数のA株比率が上昇すれば、当然パッシブファンドはA株を買うことになる。3%近いウェイト引き上げは、これらのETFだけでも50億ドル(5300億円)近いA株買いにつながる。

この他、「世界株指数」など他のインデックスでも比率が引き上げられるので、それもA株の買いとなる。またアクティブ運用のファンドも、極端に指数からかけ離れた運用をするとリスクが高まるので、やはりA株を買う傾向が強まる。

こうしたパッシブ・アクティブ両方の買いによって、今年だけでも中国に600億ドル(約6兆4000億円)程度の投資資金が向かうとの見方も出ているのだ。これらの商いは、大いに香港市場を潤す。

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