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「デモ」か「中国マネー」か? 翻弄される香港のジレンマ

市場を支配する大国の「アメとムチ」
大規模デモのきっかけとなった「逃亡犯条例」改正案の撤回が決まったあとも、いまだ過激な抗議行動がおさまらない香港。反中感情の高まりとは裏腹に、じつは経済面での中国の存在感は日に日に増している。
米国の投資運用会社で働いた経験があり、『マネーの代理人たち』の著書もある小出・フィッシャー・美奈氏が、莫大な中国マネーに翻弄される香港の今を描く。

デモの混乱はあれど、香港証券取引所は過去最高利益

香港はまだ怒っているーー。

今月10日、香港で行われたワールドカップ・アジア予選での出来事。中国国歌の演奏が始まった途端、満場の香港サポーターの間から怒号のようなブーイングが沸き起こり、スタジアムに響き渡った。

「香港は中国ではない」という強烈なメッセージだ。

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普段でも混雑する香港の中心街を100万人や170万人(人口の4人に1人)という大群衆が埋め尽くしたデモ行進。火炎瓶や催涙ガスが飛び交う非常事態となって、林鄭行政長官がついに今月4日、逃亡犯条例改正案の撤回を発表した。ただし、これで混乱が落ち着くかどうかは予断が許さない。

まだ幼さの残る中学生までが授業を休み、マスクをかけて抗議行動に参加する映像には思わず目を奪われる。香港の自治になじみ、自分を「中国人」だとは考えられない若者達の政治的な覚醒。「一国二制度」を支えてきた特別行政区基本法が2047年に失効することへの彼らの恐怖感も伝わってくる。

抗議行動が続いた間、株式市場も混乱した。香港の株価の動きを示す「ハンセン指数」は大幅ダウン。香港で予定されていたバドワイザーの最大98億ドルとアリババの最大200億ドルの株式公開も、時期が悪いと延期された。どちらも日本円で「兆」のつく大型案件だ。香港証券取引所は、サイバー攻撃にもあった。

 

それでもーー。

投資マネーの動きを見ると、香港はすでに中国本土にどっぷり依存している感が否めないのだ。

実は、デモによる騒擾をよそに、香港証券取引所 の上期業績は過去最高だったのだ。売上は前年比5%(86億香港ドル、約1200億円)、利益も3%伸びて(52億香港ドル、約700億円)、2000年の新取引所開設以来の好業績となった。 デモが始まった第2四半期(4―6月)の業績だけを見ても、利益は前年比5%伸びて堅調だ。

いったいどうして? というと、香港で大量の中国「A株」、すなわち中国本土に上場する人民元建ての中国株が買われたおかげだ。香港に上場する「H株」ではない。

この背景には、グローバルな株式指数(インデックス)に組み込まれる「A株」の比率が引き上げられていることがある。