文化や国民性もあるのかもしれない。日本人は、どのような事情を抱えているか分からない他の患者さんがいる待合室で、大きな声で話すことに躊躇する。また日本の不妊治療専門医院では、病院スタッフが待合室の患者さんのところに来て、極度に押し殺した声でヒソヒソ話している姿を良く見かけた。患者さんの気持ちとプライバシーへの細やかな配慮なのだろうと思う。対照的に、台湾の待合室では、スタッフと患者さんの間で、治療内容や体調について結構大きな声で冗談交じりの会話がなされている光景を目にする。

病院だとどうしても重苦しい空気になりがちだが、笑顔や明るい空気に救われることもある Photo by iStock

妊娠率63%以上・出産率50%以上

文化や国民性以外で考えられる要因は、第三者提供卵子を使っての治療成績は、その他の不妊治療の成績に比して各段に良いことである。この領域は、国・施設により治療成績の示し方やデータの定義・計算式が異なったりするので、単純に比較はできない。日本では、40歳を越えて不妊治療を受けた場合、妊娠できる確率は10%程度、出産までたどり着ける確率は8%以下と言われてきた。

私が台湾のコウノトリ生殖医療センターで目にしたデータは、第三者提供卵子を用いた不妊治療での妊娠率は63~73%、出産率は50~60%となっていた(注:当センターの過去5年間の成績であり、40歳以上のみのデータではない)。分母に含まれている患者年齢が大きく異なるので数字を単純比較すべきではないが、一患者にとっては、かなり印象の異なるデータである。

「この治療では妊娠しない確率の方が高い(だから、あまり期待し過ぎないでほしい)」
と、
「この治療では妊娠する人の方が多い(だから、結果を楽しみにしましょう)」

では、病院側の患者に相対する日頃の言動が異なって当然である。今まで幾度もの挫折を味わってきて、最後の治療と向き合っている患者にとっては、この治療実績は希望であり、明るいスタッフの対応は頼もしさすら感じさせてくれるのである。

最初は他の患者さんがいる待合室や診察室でスタッフと談笑することに大いに抵抗があった私だが、段々台湾の医院の雰囲気に慣れてきて、3月には胚移植を受けている間中、看護婦さんと笑いながら冗談を交わせるまでに進化していた。

次回は10月9日公開予定です

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