訪れたのは「法科学鑑定研究所」。科学鑑定を行う国内有数の民間鑑定機関で“民間の科捜研”とも呼ばれています。お話を聞かせてくださったのは、DNA型鑑定を担当する清野(せいの)優花さん(博士・新卒入社5年目)です!
意外と知らない「DNA鑑定」
──DNA型鑑定が必要とされるケースは様々あると思いますが、たとえば「法科学鑑定研究所」では、どんな依頼を受けることが多いのでしょうか?
当社では民事事案に関する鑑定を主としているので、相続関係を明らかにするための親子鑑定や兄弟姉妹鑑定をご依頼いただくことが多いです。

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たとえば、何らかの理由により兄弟姉妹の中でご自身だけが生みの親と別戸籍になってしまっているため、「戸籍上は親子ではないけれど、実親とは血縁関係がある」ということを証明するために兄弟姉妹鑑定をするケースなどがあります。
──依頼を受けてから、どのように鑑定が進んでいくのですか?
基本的にはご依頼者さまからお電話などで相談を受ける段階から、検査をして結果をご報告するまで一貫して担当します。「DNA型鑑定」という言葉自体は聞いたことがあっても、具体的に何があればいいのかまではわからないという方が多いため、まずは「この方にはDNAの採取にご協力いただけそうですか?」「こういうものは集められますか?」など、こちらから手段をご提案するところから始まります。
「親子鑑定をしたいけれど対象となる方がすでに亡くなっている」「本人に知られずに鑑定をしたい」など、状況は本当に様々なので、お話を聞きながら最適な方法をスムーズに判断するのは大変なこともありますが、「ご依頼者さまが抱えるモヤモヤをなるべく早く、確実に晴らせたら」と思いながら日々ご相談を受けています。
──たとえば、DNAを抽出できる試料にはどんなものがあるのでしょうか?
当社で推奨しているのは、口腔内の細胞です。綿棒で頬の内側をこするようにして細胞を採取します。本人に知られずに証拠を集めたいといった場合には、ガムや歯ブラシ、毛髪、ティッシュ、口にくわえたストローやタバコなど……。きちんと抽出できない可能性もありますが、身のまわりの様々なものからDNAを採取できそうなものをお持ちいただきます。

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対象の方が亡くなられている場合は、ご遺髪や爪、あとは遺品の中のクシやひげ剃りなどをお持ちいただくこともあります。ご病気の経験があり、病院に病理組織などが保管されていた場合は、依頼者や対象の方の親族の方等が病院側に依頼を行い、その方々が提出を受けた病理試料を持ち込むこともあります。
──「きちんと抽出できない可能性もある」とのことですが、保存状態や時間の経過などによって成功の確率も変わってくるのですか?
DNAは生ものと同じなので、暑い時期に常温で置かれていたり、濡れたままの状態になっていたりすると、腐敗が進んでいて抽出できないといったケースがあります。できれば乾燥した状態で、あまり温度変化が激しくない冷暗所で保管されていたもののほうが出やすいというのは確かです。