足と歩き方は50歳を境目に変化する

アシックスが知見を公開
アシックス スポーツ工学研究所

「50歳の境目」で意識を変える

株式会社アシックス スポーツ工学研究所は1985年に設立されました。「スポーツで培った知的技術により、質の高いライフスタイルを創造する」というビジョンを具現化するアシックスの基幹を担う部門になります。

私たちがこだわっているのは「ヒューマン・セントリック・サイエンス」。人間の身体や動作を科学的に分析することで、アスリートに限らず、一般の人々の生活に役立つ製品やサービスを継続的に開発することを哲学としています。基礎研究はもちろんのこと、新商品のアイデアを出すこともあります。

3次元足形計測機や歩行姿勢測定システムなどから集積される膨大なデータを分析すると、人間の足形や歩き方は、50歳を境に大きく変化することがわかってきました。

子供の足は、小学校の高学年から中学校にかけて大きく成長する時期があるのは、皆さんも実感されていると思います。でも、18歳頃に成長が止まり「大人の足」になると、50歳頃までは大きく変化しません。

ところが50歳を過ぎると、特に女性は顕著に変化します。歩き方に関しても、20歳と50 歳でほとんど差がありません。ところが、50歳を過ぎると、男女ともに大きく変化を始めるのです。

80歳になっても30代のように歩いている人もいれば、50歳から急激に衰えて、腰が曲がり出すなど、歩き方に注意が必要な人も出てきます。

要は、50歳になった時点で、自分の足形や歩き方の変化について意識するかしないかで、その後の人生が大きく変わるということです。

実は、私たちも経験的に「50歳で何かが変わるのではないか?」という仮説を持っていました。

だからウォーキングシューズを作るときも、50歳未満と50歳以上に対象を分けてきました。それが数字で裏付けられたのは自信を持って開発できるきっかけになりました(この本でもエビデンスをたっぷり紹介するつもりです)。

では、50歳を境に、いったい何が変わるのか? その変化を止めるには、どうしたらいいのか? いつまでも健康で楽しく暮らすためには、どこに気をつけるべきなのか? 運動をするとき、靴を選ぶとき、どんな点に注意すべきなのか? 運動をするとしたら、どんなスポーツが望ましいのか? このようなことをご紹介します。

たとえば50歳を境に足で大きく変化する代表例は、外反母趾です。女性に特に多くなり、3人に1人は注意が必要な状態になります。

また歩き方では、50歳を境に普段の歩く速度が落ちてきます。同時に腰が曲がり、歩幅(ストライド)も落ちた歩き方になってしまいます。

ふだん運動をしていない人に対して、私たちがおすすめする運動はウォーキングです。簡単に始められるし、怪我の心配も少ない。とはいえ、ただやみくもに歩けばい
いというものではありません。気をつけるべきポイントがたくさんあります。

アシックスは1980年代にはウォーキングシューズを発売していますが、当時は「スポーツシューズの履き心地を合わせ持った革靴」という位置づけでした。しかし、最近は「運動としてのウォーキング用のシューズ」にも力を入れています。足形や歩き方のデータを蓄積した知見をもとに、偏平足の人や速く歩きたい人の靴選びなど、さまざまなアドバイスができるはずです。

最近、「人生100年時代」という言葉をよく耳にします。読者の皆様にも、100歳でも元気に歩いていただきたいと思います。夢物語のように思うかもしれませんが、後期高齢者でも若者のように歩いておられる方は存在します。

これは実現可能かどうかの問題ではなく、50歳を境に始まる足や歩き方の衰えに対して、正しい歩き方や靴選びを知り、身につけるかどうかが大切なのです。

いつまでも元気に歩くために、いま何をすべきなのか? 読者の皆様に「究極の歩き方」を提案します。
  
株式会社アシックス スポーツ工学研究所 市川 将  楠見浩行 

株式会社  アシックス スポーツ工学研究所   1985年アシックスのシューズ、アパレルの研究部門が統合されて設立。「スポーツで培った知的技術により、質の高いライフスタイルを創造する」というビジョンを具現化するアシックスの基幹を担う研究部門。人間の身体や動作を科学的に分析することで、アスリートに限らず、一般の人々の生活に役立つ製品やサービスを継続的に開発することを哲学としている。アシックスは1980年代に「走れるビジネスシューズ」を発売、ウォーキングの研究を進め、2002年に3次元足形計測機を店頭に配備、百万人単位の日本人の足型のデータを持つ。2017年に3Dセンサーを使った歩行姿勢測定システムを、NECソリューションイノベータと共同で開発、3Dセンサーに向かって歩くだけで、その人の歩き方の特徴や歩行年齢などがわかるシステムを生かして分析を進めている。

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