足と歩き方は50歳を境目に変化する

アシックスが知見を公開
9月18日に発売された、アシックス スポーツ工学研究所著『究極の歩き方』(講談社現代新書)。本日は、その「まえがき」を公開します。
著者のアシックススポーツ工学研究所とは、1985年に設立されたアシックスの基幹を担う研究所。約100万人の足形、数千人の歩き方のデータを持ち、長年、足と歩き方に関する研究をしてきました。「日本人の足をどこよりも知っている」と言っていいでしょう。より長く元気に歩くための秘訣とは?

日本人の足を考え続けて

「海外メーカーのスポーツシューズをいろいろ試したんですが、どれも窮屈に感じてしまって。不思議なんだけど、まったく同じサイズでもアシックスの靴のほうが足にしっくりきますね」

そんな嬉しい評価を、お客様からいただくことがあります。

でも、実は不思議な話ではないと考えています。私たちは、靴の履き心地をよくするために、足の形にこだわりを持って測定や分析を続けてきました。

なかでも日本人の足に対しては多くの知見を蓄積し、靴の機能設計に活かしてきました。これがお客様のこのような評価につながったと思います。

同じサイズでもほんの少しバランスが変わるだけで、フィット感は変わります。だから、日本人の足にはどんな靴が合うのかと、長年考えてきました。

日本人の足形や歩き方の微妙な特徴を熟知するために、課題となっていたのが、「3次元」の足の形を短時間で測定する手法を開発することでした。

課題解決の転機になったのは、2002年に3次元足形計測機(株式会社アイウェアラボラトリー社製:INFOOT USB)を店頭に配備したことです。

1980年頃までは足の裏に墨を塗って魚拓のようなものをとり、さらにメジャーで足の各部を計測していました。それが、3次元足形計測機により、レーザー光を当てるだけで360度、あらゆる方向から足形を計測できるようになりました。

3次元足形計測機(株式会社アイウェアラボラトリー社製:INFOOT USB)を店頭に配備

足の断面図が見られるようになったため、足がどういう風に変形しているかということも、数字で示せるようになりました。手作業で計測していた時代には、決して得られなかったデータです。

現在、200台ほどが国内の店舗に、100台ほどが欧米の店舗に置かれています。おかげで集まるデータが飛躍的に増え、日本人と欧米人の足の違いも比較できるようになりました。

手作業で計測していた時代のデータまで含めると、アシックスにはすでに日本人を中心とするグローバルな足形のデータが約100万人分集積しています。

これらの多くのデータを分析することで、お客様の年齢や性別などに応じた靴の設計を実現しているのです。

また、私たちは足形だけでなく歩き方の分析にも長年取り組んでいます。読者の皆さまが長く元気に歩き続けていただくためには、自身の歩き方の特徴を知り、歩く時の姿勢をはじめ、正しい歩き方を身につける必要があります。

歩き方を測定するには、従来は関節にマーカーをつけ目印にし、大掛かりな動作分析装置を用いて測定する必要がありました。これではさまざまな場所で幅広いデータを集めることは困難でした。

そこで、2017年、3Dセンサーを使った歩行姿勢測定システムを、NECソリューションイノベータと共同で開発しました。身体にマーカーをつける必要がなく、3 Dセンサーに向かって歩くだけで、その人の歩き方の特徴がわかるシステムです。

3Dセンサーを使った歩行姿勢測定システム

人間が歩くときの姿勢を数値化するというのは、非常に難しいことです。センサーやコンピュータの進化がなければ、実現不可能でした。そういう意味で、3次元足形計測機以上に画期的なシステムと言えるかもしれません。

こちらは登場して間もないので、まだ数千人単位のデータしか集まっていませんが、日本人の歩き方の特徴や、加齢による変化が徐々に見えてきています。これから5年10年で何万人、何十万人のデータを集積し、より多くの方が元気に歩いていただくことを目的に、幅広い歩き方の研究を進めていきます。