2019.10.18
# 飲料

キリン『本麒麟』、ここへきて「若者に大ウケ」している意外な理由

当事者が明かしたその全舞台裏
長浜 淳之介 プロフィール

「ビール好き」に応える原点回帰

そこで、新ジャンルは価格が安いこともあり、ビールほどの深い旨味を感じないといった、顧客の不満が多いことに注目。本物のビールの飲み口に限界まで近づけた商品の開発へと発想を切り替え、現存するビールメーカーでは日本最古の伝統を持つ、キリンの技術力を駆使して完成したのが「本麒麟」であった。

本格派を意味する「本麒麟」というネーミングの商品を、最も低価格帯の新ジャンルに採用すること自体、従来では考えられず、キリンの「本麒麟」にかける思いの強さを物語る。

〔photo〕gettyimages

「ビール類の低迷は人口減だけではなく、ビール類からの流出先をみるとお客様の嗜好の多様化により、チューハイやハイボールへのシフトが進んでいることが挙げられます。しかしそれ以上に、メーカーがお客さまの求めている本質的な価値に応え切れず、周辺的な奇をてらった枝葉の商品の開発に終始していたのではないかと思います」と、キリンビール マーケティング部ビール類カテゴリー戦略担当・永井勝也アシスタントブランドマネージャーは、「本麒麟」の開発の背景について強い反省を込めて語った。

家庭用のビール類の小売市場では、約6割が新ジャンルで占められている。数量では圧倒的主流派だ。

 

ところが、永井氏たちが顧客になぜ新ジャンルを飲んでいるのかを調査してみると、「本当は飲みたいのはビール。新ジャンルが別に飲みたいわけではない。だけどお金がないので、やむを得ず新ジャンルを飲んでいる」という声が圧倒的に多かった。

だから、「友達が遊びに来た時には新ジャンルは出さない。給料日のすぐ後、何か嬉しいことがあった時や記念日には、ビールを飲む」というのが、新ジャンルのユーザーの本音だった。

キリンの商品で言えば、本当は正真正銘のビール「一番搾り」が飲みたいのに、リーズナブルに毎日飲みたいから、顧客から見て“ビールもどき”の新ジャンルを購入していたとは、受け入れ難い現実であった。

ビール会社にしてみれば、今までの取り組みにノーを突きつけられたのに等しいからだ。

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