甦った「あのときの恐怖」

8月19日のランニングスタジアムでは、この本の表紙用の写真撮影を行った。

朝から小雨がぱらつくあいにくの天気だったが、私は北村が運転する車で、約束の時間より少しはやめに到着すると、義足と義手を装着するため控え室へ向かった。

扉を開けると、人なつこい笑顔が待っていた。

「お久しぶりです、乙武さん!」

義足デザイナーの小西氏だ。パイプの色がこれまでのシルバーから義足と同じマット調の黒に変更されたのだが、この日は、新しい義手と義足の黒のバランスを確認するために駆けつけてくれた。

部屋の奥では、遠藤氏と沖野氏が義足のアタッチメント(付属品)の打ち合わせをしている。そしてそこに、汗を拭きながら内田氏が現れると、久しぶりにプロジェクトメンバー全員集合となった。

「こんにちは。今日も暑いなかお疲れさまです」
「ほんと、湿気がたまんないよね」

内田氏といつも通りの挨拶を交わすと、ストレッチが始まった。

撮影はトラックのスタート地点で。私の立ち位置が決まると、サポート役の内田氏と北村は、写真に写り込まないぎりぎりの場所に下がった。

「怖っ……!」

思わず声が漏れる。
5ヵ月前に転倒したあの日とまさに同じ状況だ。もちろん今回は、私の身体がぐらつけば、すぐに飛び込んでこられる位置に内田氏と北村はいるのだが、どうしてもあの日のことがフラッシュバックしてしまう。

「いい写真が撮れましたよ。次は全員集合でお願いします」

カメラマンの指示で、遠藤氏、沖野氏、小西氏、内田氏、北村が私のまわりに集まる。とたんに緊張がほぐれていくのが、自分でもわかった。
「乙武さん、笑顔がさっきよりも自然ですね!」

カメラマンの言葉に誘われるように、みんなの笑顔が揃った。
この日の歩行練習は4本。3本目まではなかなかよい記録が出なかったが、最後の4本目で12.8メートルの新記録が出た。10メートルまではなんとかリズムに乗って歩いたのだが、終盤に疲労を色濃く感じてしまった。息が続かない。体力的なことも考えると、いまの私にはこれが限界のようにも思われた。

(構成/園田菜々)

次回の最終回は9月26日(日)公開予定です

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