3つの課題

この時点(2019年夏)で、私は3つの課題を自覚していた。

まずは、依然として右足が出にくいこと。義足の軽量化によって右足が出やすくなったとはいえ、左足のスムーズさに比べれば明らかに差があった。数メートル歩いて身体に疲労が溜まりはじめると、右足が床に引っかかるようになる。もっと左足に体重をかけられれば右足が出やすくなるはずだが、脱臼している左の股関節を無意識のうちにかばってきた私にとって、それはなかなか勇気のいることだった。

撮影/森清

次に、歩くスピードが速くなったため転びやすくなったこと。リズムをコントロールしながら歩ける間はいいが、歩行に勢いがつきすぎると突然がくんと倒れてしまう。内田氏はそんな現状を、「自転車の補助輪が取れたばかりのような状態です」と表現した。

3つ目は、歩いているうちに呼吸が苦しくなり、体力が尽きてしまうこと。これもスムーズに足を振り出せないために起こる現象で、一歩一歩に体力を必要とすることが原因だった。

だが、そうは言っても夏前に比べれば、ずっと「歩ける」ようになっていた。もちろん、遠藤氏が最終目標に掲げる「義足を履いて街中を歩く」ことを考えれば、まだ麓にも達していない程度だったが、歩行の質やスピードは格段に向上していた。

自宅のリビングだけではもの足りないと感じるようになったのもこのころだ。リビングルームに敷かれたコルクマットの上では、4メートルの直線距離を確保するのがやっと。いままではその距離を歩くにも四苦八苦していたが、私たちはもっと長い距離を歩くための環境を必要とし始めていた。