数年前、日本でも人気YouTuber集団アバンティーズが劇場映画に主演したり、あのヒカキンもテレビ番組に出演するようになったりと、YouTuberの活躍は目覚ましい。もはや我が子がYouTuberになりたいと言っても賛成する親も増えてきたのではないだろうか。

YouTuber先進国アメリカでは、ずいぶんと前からYouTubeチャンネルが新たな才能を発掘する場となっている。自身のYouTubeチャンネルで短編映画やミュージックビデオを発表し、ハリウッドに進出するYouTuberも珍しくないのだが、劇場映画で成功しているのはまだほんの一握り。そのなかで、頭ひとつ抜けた成功を収めているのがボー・バーナムだ。

16歳の時、ダークな歌詞で散りばめられた自作のピアノ弾き語りをYouTubeから配信して世界中から注目を集め、高校在学中にコメディアンとして頭角を現した後も、ミュージシャン、俳優、プロデューサー、脚本家、詩人として活動の幅を広げ、昨年2018年には映画監督デビューを果たした。

2019年の第76回ゴールデングローブ賞の授賞式に参加した、ボー・バーナム(左)と彼が手がけた映画の主演女優であるエルシー・フィッシャー。ちなみに、バーナムの身長は196cm

SNSとともに生きるジェネレーションZ(1990年代後半から2000年代にかけて生まれた世代)の青春、恋愛、成長をリアルに描いた『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』(9月20日公開)は初監督作にもかかわらず全米で大ヒット、数々の映画賞に輝いている。SNS時代のアメリカン・ドリームを体現するボー・バーナムに、映画制作のきっかけやいまのSNSに対して感じている問題について聞いた。

クリエイターとして、世間の声は聞かない

――バーナムさんはスタンダップコメディや自身のYouTubeで人種やセクシュアリティをジョークにしていますが、ポリティカル・コレクトネスが声高に叫ばれるいま、特にアメリカで、そういったジョークはかなりリスキーだと思うのですが。

ボー・バーナム(以下、バーナム): コメディアンは世相をジョークにするものだと思っています。だから、ポリティカル・コレクトネスという新しい概念が出てきたのなら、それはネタです(笑)。もし世間に好かれようとするなら、ポリティカル・コレクトネスは意識すべきですよね。でも、みんなに好かれるようなジョークを意識的に発するのはコメディアンとしては違うような気がします。

現代はネットから様々な批判がどうしても耳に入ってきまが、クリエイターとしては耳をふさぐようにしています。自分の観客とは、あまり対話をしないようにしているというか。だって観客の反応を常に気にしていたら、自分自身の声を失ってしまうから

――そういえば、バーナムさんのコメディ・ショーでゲイ活動家たちがデモをしたことがありますよね。

バーナム:ありましたねー。10年ぐらい前に4人のゲイ活動家たちがアラバマ州のショーに現れたんですよ。彼らは僕の歌詞を間違って受け止めてしまったんですが、僕はコメディアンとして、自分を非難する人たちに対して怒りも感じないし何とも思わない。というのも、僕だってショーで好きなことを言っているんだから、彼らだって好きなように反応していいわけだし。

アメリカ人が必要以上にポリティカリー・コレクトになったのは、トランプも原因かもしれないですね。トランプに対して本当に多くのアメリカ人は怒っていて、何でもかんでも“正しい方向”に直さなくちゃいけないと思っているんじゃないかな(笑)。