死亡で議論過熱…「電子タバコ」いま何が問題なのか

「グレー=悪」として叩く風潮
美馬 達哉 プロフィール

電子タバコで何が起きたか

タバコの害というと肺ガンがまず思いつくが、今回の問題はガンではない急性の肺疾患による死亡だ。

9月初めの時点では、電子タバコに関係しているかもしれない重症の肺疾患による死亡例は6人、米国内で調査中の症例が数百人という報道だったが、リスクへの認知度が上がるにつれ増えていく可能性が大きい。

電子タバコによる健康被害は、ユーザーの年齢・性別の構成を反映して、健康な若い男性が急に咳・息切れ・胸痛を訴え、呼吸困難のため酸素マスクが必要なほどになって入院し、ARDSと診断されるというパターンが多い。

 

生命が助かっても、後遺症による肺の障害のために、退院後に激しい運動ができなくなった人もいるとの報道もある。

ヴェイプされた蒸気の微粒子が吸い込まれて、肺に害を与えたと考えられているが、電子タバコ用の溶液の成分のうち何が原因かははっきりしない。

死亡したイリノイ州の患者は、ニコチン溶液、マリファナ溶液、自分で配合したオリジナルブレンド溶液などいろいろ使用していたという。

さまざまな溶液をヴェイプできるのが電子タバコの魅力の一つで、(すぐに禁止されたが)やせ薬やED治療薬入り電子タバコ溶液まで存在した。

いまARDSの原因として怪しいとされているのは、マリファナの成分(TLC)とビタミンEだが、発症した人の全員がそれらの混じった溶液を使っていたわけでもなく原因不明だ(2)

なお、ヴェイプの蒸気の微粒子が肺の奥に吸い込まれることは、大気汚染と同じなので危険ではないかということは初期から指摘されてきた。

たとえば、ホテルの大きなイベントルームでも、59〜86人の電子タバコ使用者がいると、もともとは2-3μg/m3だった粒子状物質PM2.5が819μg/m3まで上昇したという報告が2017年にされている(日本での環境基準は15μg/m3)。

(2)ちなみに2012年には、電子タバコ溶液に含まれるグリセリンが原因と疑われる特殊な肺炎(外因性リポイド肺炎)が報告されている。