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日本の改憲議論とイギリスの大混乱から「首相解散権」を考える

イギリスの経験に学ばなければいけない

イギリス政治の混乱が続いている。

「合意なき離脱」も辞さないとしたジョンソン大統領を、保守党内からも造反者が生まれた。議会は10月末の「合意なき離脱」を禁止する措置をとった。

EUからの脱退という巨大事件にどう対応するのか見取図を決められない状況は、イギリス政治そのものに対する評価にかかわる事態であろう。

ジョンソン首相は、「合意なき離脱」を辞さず、と強調していたが、あっさりと議会に封じ込められた。そこでジョンソン首相は、議会の解散を提案したが、これもあっさりと議会に否定されてしまった。ジョンソン首相は造反者を保守党から除名したが、事態の打開にはまったくつながらない措置でしかない。

なぜこんな混乱が生まれたのか。もちろんブレグジットに関する国民投票が行われたからだ。

だが、今現在のジョンソン首相と議会のやりとりを見ていると、2011年の議会任期固定法による首相解散権の封じ込めが、大きな伏線となっていることを、痛感する。

このことは、日本における改憲議論にも、かかわってくるだろう。

立憲民主党などが、首相解散権を制約する改憲を提案している。憲法は権力を制限するのだから、といった抽象的な話で首相の解散権を制限していいのかは、疑問だ。国会も、国会内の野党も、権力を持っている。首相だけが地上の唯一の権力者ではない。

どこを、どれくらい、どのように制約するかは、国制全体の見取図の中で、考えていかなければならない。

 

イギリスの混乱の教訓

2011年議会任期固定法は、内閣不信任決議に対する解散権行使か、下院の3分の2以上の賛成による自主解散によってしか、議会が解散されないことを定めた。つまり首相から議会の解散権を事実上取り上げた。

2010年のイギリス下院選挙において、どの政党も過半数の議席を獲得することができず、「ハング・パーラメント」の事態が起こった。

イギリスは完全小選挙区制をとっており、小政党が議席をとりにくいため、「ハング・パーラメント」は、第二次世界大戦後では1974年を除いて初めてという珍しい事態であった。