9歳の子に不妊手術を…!? 被害者男性が、国家と戦う決意をした日

封印していた怒りと悲しみが蘇った
佐藤 光展 プロフィール

記録は「一切残っていない」?

小島さんが被害に遭った札幌市北区の中江病院は、現在は建物を一新して心優会中江病院となっている。ただでさえ狂気に満ちた優生保護法さえも踏み越えて、精神疾患のない人にまで断種を強いた病院の罪は極めて重いが、現在は「身体拘束を極力行わない方針を3年前に打ち出し、成果を上げている」と事務長の栗塚将輝さんは語る。

栗塚さんによると、小島さんの入院記録や手術記録は「残っていない。いつ廃棄したのかもわからない」という。年月が経ち過ぎているので無理もないが、強制不妊手術やロボトミー手術、電気ショックなどの実施件数や、年報・記念誌の類、当時働いていた職員の名簿なども「一切残っていない」のだという。

本当だとすれば、病院の歴史を伝える資料を次々と捨ててきたことになる。組織として大丈夫なのだろうか?

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小島さんが、今も激しい恐怖を感じるためにこの病院に近づけないことを伝えると、「記録がないのでコメントのしようがありませんが、心中お察しします」と述べた。

手術記録の多くは、強制不妊の首謀者であった国と、都道府県の「怠慢」によって失われた。そのせいで被害者は、断種された証拠を新たに求められることになった。二重の被害といえる。

小島さんもこれまで、病院の泌尿器科など複数の医療機関で診察を受けた。だが、60年前の手術痕を確認する作業は極めて難しい。小島さんはやり切れない思いを抱いている。

 

「手術を受けた証拠が必要なのはわかります。でもなぜ、被害者がこんな苦労までしないといけないのか。嘘をついているというのか。記録がないのは国や自治体や病院のせいなのだから、彼らが全力で調査を行い、証明するべきではないのか。『記録はありませんでした』の一言で済ませて、あとは何もしないという無責任さが許せない」