3・11炉心融解を予言した医師が警鐘 台風に続く「噴火と地震」

それでも原発を止めない日本
一志 治夫 プロフィール

──石黒さんが早くから指摘されていた東海地震と東南海地震の同時発生は、2005年にスパコンのスーパーシミュレーションでも証明されました。複数の地震が連動して起きる可能性もあります。どんな備えが必要でしょうか。

 

石黒:まず、食糧難になりますから、一戸建てであれば、床を掘って食糧庫をつくっておく。温度の安定したところに、とりあえず1ヵ月分くらいの食糧を貯蔵しておければベスト。静岡、名古屋から四国、九州の一部、瀬戸内海沿岸と結構な地域が食糧難になりますからね。四国4県、紀伊半島全域、大阪、広島の一部なども入ってきたら、いったい何人住んでいると思います? どうみても2千万人は超えています。戦争のときに、2千万人の部隊が補給線を絶たれて孤立していたら、そこにどれだけの物資を投入しないといけないか、ということを考えればわかることです。

あとは、水の確保。僕自身は飲める分だけでも、自宅に2リットルの飲料水を8本用意してます。あと、沸騰したら飲めるかもしれないという水を50本ほど日常的に置いています。

応用科学を過信しない

──スケールの大きな地震や火山の噴火に遭うたびに、人間の小ささを改めて感じてしまいます。

石黒:昔の人、1万年以上前の人は、火山に神を見ていたんですね。『古事記』に書かれている日本創生伝説は、火山列島・日本の誕生から火山の噴火、崩壊までを表していると僕はみています。阿蘇火山は1万9千年前に大噴火しているんですが、『古事記』には、その噴火を描いたと思われる記述があります。神様である火山の行いを記録し、子孫に神の歌として伝えようとしたんですね。人間にとって火山は、究極の信仰の対象だったわけです。

インドネシア・タンボラ火山(gettyimages)

現代人ももうちょっと大きな目で自然とか地球とか、宇宙といったものを神だと思ってもいいと思う。いくら科学が進歩しても、結局わからないものがある。一方で、「万有引力」のように絶対的に正しいものもある。人間が一番素直に信じられるのは、自然の摂理です。そして、そういう自然界の真理を追究してきたのが自然科学だし、宗教でもあると思うんです。「神がこう言った」という一神教の人の言葉を信じるよりは、僕は自然の摂理に沿った宗教に好感を持ちますね。

でも、日本の現状は、原発ひとつとっても、自然を侮り、自然科学ではなく応用科学にのみおもねり、金儲けのことしか考えていないように思えます。

たとえば、インドネシアのタンボラ火山が破局噴火すれば、社会というものは1週間ぐらいで崩壊してしまいます。急激な氷河期が来て、たぶん1年ほどでほぼ世界は全滅するでしょう。人類はそのレベルの生物なんですよ。自然神への畏敬を忘れないことです。

いしぐろ・あきら/1954年、広島県生まれ。医師、小説家。阪神淡路大震災に遭遇したことを契機に執筆を開始。地変国日本のあり方を問うた処女作『死都日本』(第26回メフィスト賞受賞作)でデビューし、その科学的根拠に基づいた緻密な構成力と、圧倒的なスケール感で、読者に異例の反響を呼んだ