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ひきこもり者「親の遺体放置」多発の裏にある「小さなノーサンキュー」

一人ひとりの「拒否」が招く疎外

相次ぐひきこもり者の「親の遺体放置事件」

〈91歳の父親とみられる遺体を東京 足立区の自宅でおよそ1か月間放置したとして61歳の息子が警視庁に逮捕されました。息子は長年、引きこもりの状態だったとみられ「急に1人になるのが怖かった」と供述しているということです。
(中略)
武田容疑者はおよそ30年前から仕事をせず父親の年金で生活していたということで、長年、引きこもりの状態だったとみられています〉(NHKニュース『父親の遺体放置「1人になるのが怖かった」61歳息子逮捕』、2019年8月26日より引用)
〈自宅アパートに女性の遺体を放置したとして、警視庁板橋署は(8月)29日、死体遺棄容疑で、東京都板橋区大山西町、無職、本村克之容疑者(53)を逮捕した。遺体は同居する母親(88)とみられる。本村容疑者は調べに容疑を認め、「(今月)19日に母親が亡くなったが、何も考えられなかった」と供述している

〉(産経新聞『自宅に母親の遺体放置か 53歳男を逮捕 警視庁』、2019年9月1日より引用)


長期化したひきこもり者が中高年になり、生活を高齢になった親が支えるような状況が拡大している。近年見聞きすることも多くなった、いわゆる「8050問題」である。上述したような事件は今後ますます増えていくのだろう。

内閣府の調査「平成30年度 生活状況に関する調査」によれば、中高年のひきこもりは全国でおよそ61万人いると推計されている。

その7割以上が男性であり、なかには中高年になってからひきこもり生活をはじめた「短期ひきこもり者」もいるが、若年層だったひきこもり者がそのまま高齢になった「長期ひきこもり者」のケースも相当に多いと見込まれている。統計ではひきこもり期間が7年以上経過している者が半数を占めた。

 

ひきこもり期間が長期化すると、就業能力も機会も乏しくなるため、一般的にひきこもり支援の定石のひとつとされている「職能訓練を施し、仕事を与えて社会復帰させる」というルートが安易に選べるわけではなくなる。

また、ひきこもりの原因にはなんらかの精神疾患や持病が関係しているケースが多いことも報告されており、包括的な支援の道筋はなかなか立ちづらいのが現状である。

親の遺体を放置した彼・彼女らは、刑事的には「死体遺棄」とか、あるいは「年金詐取」の容疑によって逮捕されることになるのだろう。しかしながら、彼・彼女らを逮捕した先にはいったいなにがあるのだろうか。逮捕することによって解決される「なにか」があるのだろうか。

……もっといえば、彼らを「罰する」資格が、私たちの社会にははたしてあるのだろうか。そんなことを最近、ずっと考えている。