若かりし頃のジェフリー・エプスタインとドナルド・トランプ(gettyimages)

性犯罪者の大富豪からMITに流れた「汚染された資金」、その是非は?

MITメディアラボ所長も辞任の衝撃…

世界的に注目集めるエプスタイン事件

伊藤穣一氏が9月7日、MITメディアラボ所長を辞任した。アメリカの実業家ジェフリー・エプスタイン被告による少女への性的虐待事件に関連して、メディアラボが被告からの寄付を隠蔽していた事実がThe New Yokerによって暴露されたことを受けての決定だった。

事件の背景や伊藤氏に関する経緯については、すでに拙稿「MITメディアラボのスキャンダルが『テック産業全体』への不信感に繋がる理由」や平和博氏による記事などで紹介されている。しかし日本の大手メディアでは、事態を収拾させるために伊藤氏が辞任に至ったような説明のされ方をしており、問題の根幹が十分に明らかになったとは言い難い。

伊藤穣一氏〔PHOTO〕gettyimages

この事件は、エプスタイン被告がメディアラボ関係者をはじめとした世界中の権威ある人々や研究機関とコネクションを持っていたこと、そして性犯罪者である被告の資金がさまざまな形でこうした要人や名門大学、大企業に流れていたことの衝撃が大きい。

直接的な交流があったビル・ゲイツ氏以外にも、資金援助したカンファレンスにはGoogleのラリー・ペイジ氏やサーゲイ・ブリン氏、Amazonのジェフ・ベゾス氏ら錚々たる人物が参加しており、特にテック業界と深いつながりを持っていた。

こうした背景を受け、アメリカなどでは犯罪者から寄付や投資を受けることの是非が盛んに議論されている。実際、MIT以外にもハーバード大やアリゾナ大、ブリティッシュコロンビア大など過去に寄付を受けていた大学は、事件を受けて説明を余儀なくされている。

プライバシーや独占禁止法、社会的分断などでテック産業に世界中から厳しい目が向けられる中、業界に流れ込む資本について改めて考える必要がある。果たして、「汚染された資本」にはどのように向き合うべきなのだろうか?

 

ソフトバンクと「汚染された資本」

「汚染された資本」とテック産業の関係で、真っ先に思い浮かぶのはソフトバンクとサウジアラビアの関係だ。

昨年10月、トルコのサウジアラビア総領事館においてジャーナリストのジャマル・カショジ氏が殺害され、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の関与が疑われたことで、サウジアラビア政府からビジョン・ファンドへの巨額出資を受けるソフトバンクグループに批判が集まった。

実際、事件直後にはUberのダラ・コスロシャヒCEOが同国で開催されたカンファレンスへの参加を取りやめた。Uberには同国の政府系ファンドが3800億円の巨額出資をしていたため注目が集まったが、ソフトバンクの孫正義社長はこうした動きとは無縁だった。