先駆者たちのおかげで、私たちが働けている

ところで、「働き方」というのも人それぞれだと思います。自分が何に重点を置くのか、それぞれの考え方があるはず。自分のやりたいことや能力を生かすためにフルタイム勤務の人もいるでしょう。もちろん生活のためもあるし、子どもの成長に合わせてできる範囲で仕事をしたいという方もいる。そして子どもと家族を専業主婦として支えたいという方も。それはそれぞれの働き方の選択で、大切なのは「選択することができる環境にあるか否か」だと思います。

ただ、以前は思い切り仕事をしたくても、子どもを産んだ女性は働けないだろうという空気がありました。だからこそ、私は奥山さんにも、そして会社の先輩方にも心から感謝をするのです。お子さんともっと一緒にいたいなと思いながら、歯を食いしばって仕事をしてきた、そういう歴史があるからこそ、「女性は子どもを産んでも仕事ができる」ということが証明されてきた。並行して、時代と共に働き方も多様になり、男女問わず選択肢も増えてきた。だからこそ、子どもを産んだ女性たちの力もちゃんと能力として考えようということが根付いていったのだと。

ただ、ここまで苦労しなければ産んで働けないのであれば、それは無理と思う女性もいるかもしれません。だからこそ、それについては国が、企業が、家族が、対策を立てなければなりません。産みたいけど仕事があるから産めない、働きたいのに子どもがいるから働けない、そういう環境は悲しいことですから。

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さて、奥山さんが素晴らしいと言ってきましたが、最後にもう一人の素晴らしい方のことも明記しなければなりません。それはこれまで証言を紹介してきた夫の小田部羊一さんです。

子どもを産んでも仕事を続けたいという奥山さんに対し、「奥山の意志の強さとか見てるから、自然と認めるほかなかったのかな」と何一つ意見を言わずにいました。

共働きが当たり前と思っていましたし、子どもが生まれたら僕もちゃんと協力して。奥山に『育児が大変だから仕事を辞めてくれ』なんていう気持ちも全くない。もし言ったとしたら、奥山から『辞めるのは、あんたよ』って言われたと思う(笑)。それくらい強い人でしたから。

奥山は絶対仕事は捨てない。もし仕事を捨てるとしたら、それはあなたの方よって言われたと思うくらいだから(笑)。そのためには僕も子育ては一緒にやろうって当然のように思ってました。そういう関係でしたね」(小田部さん)

小田部さんや宮﨑さんをはじめ、演出家やアニメーターたち、の証言も盛りだくさんの一冊。アニメーション勃興期に、アニメーションをどのように作って行ったのか、子どものいる共働きをどう乗り越えてきたのか。「漫画映画」と「共働き」について多くの資料とや証言で綴られている。

文/FRaU Web編集長 新町真弓
小田部羊一さん、宮崎朱美さん発言引用/『漫画映画漂流記 おしどりアニメーター奥山玲子と小田部羊一』より