次に野口は「Y」の字になるように、体を切開したーー。死因を特定していく野口による解剖の詳細については、拙著に譲りたい。解剖を終えた野口は当時、こう述べている。
「妊娠8カ月だったこともあり、胎児は完全な形に成長していた。男の子です。テートさんが死亡した後20分以内に胎児を取り出していたら、胎児の命はたぶん救うことができた可能性があります。ですが遺体が発見された時、すでにもう遅すぎた」
出来る限り残忍なやり方で
シャロン・テートらに対する殺人事件の裁判で、犯行には、チャールズ・マンソンの指示があったと明らかになった。そしてマンソンの殺人動機は、過去に自分が拒絶されたことへの恨みだったと判明。
どういうことかと言うと、かつてミュージシャンを目指したマンソンは、ポランスキーの前に現場となった邸宅に住んでいた音楽プロデューサーが契約をしてくれなかったと逆恨みをしていた。マンソンは犯行当時すでにこのプロデューサーがそこには住んでいないことを知っていたが、その邸宅を殺戮現場に選んだ。ただ恨みを晴らすために。

マンソン自身は自ら手を下さず、信者に命じて殺人をさせた。ポランスキー邸の犯行グループは、マンソンから教えられた住所に向かって、「出来る限り残忍なやり方」で皆殺しにするよう命令されていた。