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精神科で「強制不妊手術」を受けたある男性が、脱走劇の末に見たもの

戦後日本の暗部「断種政策」の実像

女子中学生まで…!?

恐れていた強制不妊手術の日がやって来た。

大部屋にいた当時18歳の小島喜久夫さん(現在78歳)は、手術室への移動を指示された。

この日、断種される人は小島さんの他に4人いて、うち1人は女子中学生だった。

複数の男性看護師に体をつかまれて手術室に向かう途中、何度も「逃げたい」と思った。しかし、暴れても意味はない。注射や電気ショックを加えられるだけだ。下手に暴れると、ロボトミー手術で脳を破壊されかねない恐怖も感じていた。

「子どもができなければ、女遊びし放題だ……」

馬鹿げたことを考えて気を紛らわせようとした。だが、執刀医に「ズボンを脱いでそこに寝なさい」と命令されると、やはり湧き上がる怒りと恐怖を抑え切れなかった。

 

土壇場の抵抗は瞬時に鎮圧された。看護師たちに体を強く押さえられ、手術台に寝かされた。鎮静剤を注射され、ズボンと下着をはぎ取られた。股を大きく広げられ、その状態で手足を縛られた。

もはや、まな板の鯉──抗えない絶望の中で、もう全てがどうでもよくなった。

「俺はどうせ無価値な人間だ。好きにしやがれ」

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陰嚢の横、左右2か所にメスを入れられ、精管を切断された。手術は局所麻酔で行われ、「全然効かず、ものすごく痛かった」。手術時間は30~40分だったと記憶しているが、「3、4日は股間が痛くてどうしようもなかった」。