ジャーナリストの島沢優子さんによるFRaU連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」。今回はいま話題の『なつぞら』で改めて感じる「母性愛神話」と、その呪縛で苦しむ女性たちを救うものについて。

「20年前に夫に『なつぞら』を見せたかった」と島沢さんが語る理由は?

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産後6週で職場復帰

戦争孤児だった奥原なつ(広瀬すず)が北海道の酪農家庭に預けられ、上京して一流のアニメーターになるサクセスストーリーを描くNHK朝のテレビ小説『なつぞら』
松嶋菜々子や山口智子など歴代のヒロインを演じた女優が次々と出演したり、なつの幼馴染だった吉沢亮が早世し「美しすぎる死に顔」とネットがざわつくなど、今クールは話題が多い。

山口智子に松嶋菜々子、貫地谷しほりと「NHK朝ドラヒロイン大集合」でもある Photo by Getty Images

あれよあれよと言う間にヒロインは大人になり(ドラマだからね)、先月は働く母のジレンマがテーマ。8月21日放送の第123回では、なつが産休に入り、保育所を探す場面が描かれた。

産後6週間で職場復帰しても大丈夫なのかを尋ねるなつに対し、「おしん」の田中裕子扮する医師は、自身は産後1週間で仕事に戻ったと話し、なつの働きたいという気持ちを尊重する。

医者としては無理をするなと言いたいけれど、働く母親の先輩としては頑張れと言うしかない

このセリフに対し、テレビ番組の紹介サイトは「なつが働くことに対して前向きなエールを送った」と表現していたが、私は「頑張れとしかいうしかない」に、社会的支援や理解はないから女が頑張るしかないのよ、という厳しい現実を知らせる言葉に聞こえた。

自分のために子どもを預けて働くなんて

その後、福祉事務所に保育所探しに訪れる場面に。職員(田中真弓)はなつが生活のためではなく、自分の夢のために仕事を続けようとしていることに苦言を呈す。

職員「なぜ預けたいんですか」
なつ「産んですぐ、また働かなくてはならないもので」
職員「二人で働かないと、生活できないんですか」
なつ「生活のためでもありますけど、私は働きたいんです」
職員「子どもを犠牲にしても、ですか?」
なつ「(絶句して)……ぎ、犠牲」
職員「生活のために共働きをしなくてはならないご家庭があるのは十分承知していますよ。そのために保育所はあるんです。けれど本来、子どもは母親が育てるものなんです。それを勘違いされてませんか?」

主に50代から下の女性は「キターッ!」と思ったのではないだろうか。
ワーキングマザーたちを長らく苦しめてきた母性愛神話。別名「3歳児神話」とも言われる。「3歳くらいまではお母さんが面倒をみなくちゃ」というやつだ。