茂木健一郎、祈る。ブルーバックスアウトリーチが拓く科学の「未来」

あらゆる科学者に未来の希望を与えます
前回に引き続き、脳科学者の茂木健一郎氏にブルーバックスの研究者支援サービス「ブルーバックスアウトリーチ」について語ってもらいました。

今回のテーマは「ブルーバックスアウトリーチの未来」について! 研究者に対するクラウドファンディングで発展させることができる科学分野について、希望を語っていただきました。

自分の研究は科学者自身が発信すべき

BBC(英国放送協会)に代表される諸外国では、研究内容を一般に向けて紹介する際に研究者自身がプレゼンテーションをするのが基本だ。一方、日本のメディアでは、タレントやアナウンサーなどの内容がわかっていない人間が原稿を読む。これは絶対に間違っている。

メディアの人間は「研究者にしゃべらせると、長くてくどくてつまらないんですよ」などとのたまうが、ブルーバックスアウトリーチのページに挙げられている動画などを見る限り、決してそのようなことはない。

僕は、ブルーバックスアウトリーチの動画の中に、科学ジャーナリズムの一つの発展形を見ている。

研究のことは、研究者が一番よく知っている Photo by iStock
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「研究者」という人たちの面白さを示す好例として、『ビッグバン・セオリー』というアメリカのドラマがある。カリフォルニア工科大学がモデルになっているのだが、「ちょっとオタクで、コミュニケーションが苦手」な研究者のコミカルな日常を描いている面白いドラマだ。

このドラマのすごいところは、たとえば素粒子を研究している研究者が生物学の研究者をバカにするシーンがあるなど、実際の研究者をよく反映させているところだ。「素粒子という最も難しいことを研究している俺たちが一番すごくて、生物学なんてものは科学ではない」という勘違いを言ってしまう人は実際にいる。

このドラマは「科学研究者ってこんな感じなんだ」というのを如実に伝えてくれるドラマなのだ。このような研究者の“生態”に興味を持ってもらうプラットフォームとしても、ブルーバックスアウトリーチは活かせると思っている。

一匹狼の変わり者を支援せよ

もう一つ、僕はブルーバックスアウトリーチに「どこの研究機関にも属さない一方でとても独創的な研究をしている人を支援して成功させる」というような役割も期待している。

たとえば、化学浸透圧説を唱えたミッチェルというイギリスの生化学者がいる。

ATPの成因を議論していた際に、「細胞膜の内側と外側の化学浸透圧を用いてATPが作られる」という説を唱えていたのは、当時の学会では彼だけであった。彼は、どこの学術機関にも属しておらず、農場を使って自分で実験を重ねていた。外国ではインディペンデントスカラー(独立研究者)というのも意外と多く存在するものである。