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ユニクロが私たちの中で「ダサくなくなった」のはいつからか

日本人の「服を着る意味」が変わった

いつのまにか聞かなくなった「ユニバレ」という言葉。いまや、ユニクロを着ていることがバレるのを恥じるどころか、そのアイテムを使ったスタイリングがインスタグラムなどのSNSで日々発信され、ネットメディアの「使えるユニクロ」の記事は高PVを稼ぐ。

ユニクロを着る意味は、ここ数年でどのような変化を遂げたのか。

新書『おしゃれ嫌い 私たちがユニクロを選ぶ本当の理由』(幻冬舎新書)で、ユニクロが日本の「国民服」となった理由について社会学の観点から読み解く甲南女子大学教授の米澤泉氏と、ユニクロやワークマンなどのプチプラアイテムをおしゃれに着こなすことをロジカルに教えるブログが人気で、そのメソッドを綴った『最速でおしゃれに見せる方法』(扶桑社)がベストセラーとなったファッションバイヤーのMB氏の二人に、ユニクロの普及とともに起きた日本のファッションの変化について語り合ってもらった。

左から、米澤泉氏、MB氏
(構成:稲田豊史、写真:飯岡拓也)

「ユニクロをダサい」と言うのがかっこ悪くなった

――『おしゃれ嫌い 私たちがユニクロを選ぶ本当の理由』は現在のユニクロの隆盛をとっかかりに、日本のファッション史や日本人のおしゃれに対する意識を俯瞰した本ですが、MBさんはどう読まれましたか。

MB:僕がおしゃれ指南をする際は、“再現性”を求めて、誰でもどこでも買えるユニクロのアイテムを一番よく使用するんです。だから「確かにユニクロってこうだよな、こういうコンセプトでやってたよな」と確認作業をしながら読めました。感覚的なことがすごくわかりやすく書かれていますね。

米澤:ありがとうございます。今のユニクロはデザインも品質もすごく良くなっていて、女性誌では「コーディネートに取り入れられる便利なアイテム」として取り上げられているにもかかわらず、男性はその事実を意外に知らなかったりしますよね。MBさんが提案するメンズのコーディネートにユニクロを取り入れるようになったのは、いつ頃からですか?

 

MB:7年くらい前からです。と言うと、東日本大震災後に来たエシカルファッション*1の流れだと思われるかもしれませんし、そういう気運がゼロではないんですが、単純に「ユニクロはダサい」と言っているのがかっこ悪くなっちゃいましたね、最近は。ファッション感度の高い人もユニクロを認め始めましたから。

ユニクロのジャケットとパンツのセットアップをブログで紹介するMBさん〔PHOTO〕MBさんのブログ「KnowerMag」より

米澤:シンプルなユニクロをあえて着ることで「服装のことなんて、そんなに頑張っていない」のがかっこいい、というスタンスですね。私の周囲でアパレルの仕事をしている人もそんな感じです。そういう人は、アスレジャー*2を身にまとってランニングにいそしみ、食生活はビーガン(卵や乳製品も食べない絶対菜食主義者)だったりします。

MB:ユニクロが世界的なトレンドの波にハマったのは大きかったと思います。長らく装飾的なファッショントレンドが続いた後、2014年くらいにノームコア*3が来た。「服はシンプルでいいから、生き方にこだわろう」という流れですね。その時期は、ユニクロがデザインや素材に頑張りはじめたタイミング。だからユニクロを褒めざるを得なくなった背景はあると思います。

*1 エシカルファッション:素材の選定や生産の段階で、環境への配慮やフェアトレードを意識したファッション。ethicalは「倫理的、道徳的」の意。
*2 アスレジャー:「アスレチック(athletic)」と「レジャー(leisure)」を組み合わせた造語。スポーツウェアを日常着に取り入れたスタイルのこと。
*3 ノームコア:究極の普通を意味する造語。Tシャツ、パーカー、ポロシャツ、ジーンズなどのカジュアルウェアで構成され、シンプルかつユニセックスな装いを特徴とするスタイル。