photo by iStock

あなたが知らない恐ろしい京都…千年の都に秘められた「負の影」

きれいなものには裏がある…

地霊に導かれ、怨霊の声を頼りに京都の町中を歩く。そこから見えてくる、本物の京都の姿とは? 「中世」をキーワードに、神と仏、聖と穢が繰り広げる怪しい京都の奥深く、地下水脈に潜入する。怨霊たちが案内人となり、私たちを本物の京都へ誘う。これまでにない、まったくユニークな京都案内。新刊『京都異界紀行』から、「序章――例えば清水寺の花と死」を特別公開!

清水寺には他の寺にはない特徴がある

 

京都は異界である。
  
京都駅構内にあるホテルに入った若い人たちが「さて、どこから観よう」ということになった。観光客の一群である。

「ここからなら、清水寺でしょ」

四季折々の表情を見せる清水寺(photo by iStock)

そう、まずは、清水寺を目指す。京都最大の観光寺院である。

清水寺と言えば、「清水の舞台」が有名。それから地主神社が、恋占で人気が高い。そして、肝心の清水寺の御本尊と言えば「清水型十一面千手観音立像」である。

「清水型」というのは、他の「千手観音」と少し「千手」の様子が違う。最上部の左手・右手をまるで体操選手のように、思いっきり高く上にあげて、掌てのひらを合体させ、そこに小さな仏さま化仏(けぶつ)を乗せている。普通の千手観音は、左右の“手”に一体ずつ化仏を乗せるのだが、こちらの化仏は、両の掌で一体だけの化仏を大切に支える。

清水寺は、「清水の舞台」でも「御本尊」でも、他の寺とは異なっているし、なによりもこちらの境内は花やかである。浮かれた気分がある。桜の季節となると、より一層その花やかさは増す。訪れる人々は、清水寺の混雑の中、「京の雅」を観るのである。

清水寺を囲う「もう1つの京都」

しかし、清水寺の南には、もう1つの京都がある。その場所は「鳥辺野(とりべの)」という。

西の化野(あだしの)、北の蓮台野(れんだいの)、そして、この東の鳥辺野を京の三大葬地という。この鳥辺野の様子は、「八坂法観寺参詣曼荼羅」に描かれる。清水寺の参道の左右に「鳥辺野」の文字があり、そこに卒塔婆(そとば)が立ち並んでいる。

立派な五輪塔が何基もある。その葬地へ急ぎ足で向かう二人連れの、全国六十余州を巡る遊行の宗教者・六十六部。二人は死者供養をするために向かうのである。
  
鳥辺野は、まがまがしい。行き倒れて、捨てられた死骸。六波羅蜜寺の「鬘掛け地蔵」の縁起が暗示するように、死体から剥ぎ取れるものは、剥ぎ取って、最後、女人の命の“髪の毛”までも引き抜く悪党もここにはいた。髪は「鬘」となり、“金”になる。

鳥部野で犯された「罪」

また鳥部寺という寺があった。『今昔物語』に描かれるここでの悲劇は、鳥辺野が如何なる地かを語っている。こんな話である。

信仰心のある、年30ばかりの美人がご利生のある仏に結縁(けちえん)しようと、鳥部寺に伴の少女を連れて詣でた。そこで強盗に遭い、衣を盗られ、共寝を強要される。美人は従うしかない。その強盗は、かつては貴い侍であったが、罪を犯し、今は検非違使の下僕・放免となっていた。

信仰心のある美しい人と、元は立派な武士だったが今は零落し荒くれ者となっている男の組み合わせ――清水寺の「花やかさ」の後ろを振り返ると、そこに「異形」がある。清水寺の代表的風景のその裏には、このような異界がそっと顔を覗かせている。

京都では「生と死」は背中合わせ。と言っても、オドロオドロしい京都の風景は、昔むかしのこと、今はきれいに清掃され、ちょっと見には「負」の部分は見えない。

ただ、私たちが本物の京都を知りたい、観たい、と思えば、1つ方法がある。