# 空調服

あの「空調服」にパクリ騒動? 知られざる熱い「訴訟問題」の顛末

あなたの会社も他人事ではない
竹内 謙礼 プロフィール

一方、これが逆だとどうだろうか。同じように仮として、サンエスが空調服を開発して、それを(株)空調服が仕入れて販売していたとしよう。自分達はファンだけを作っていて、同じように「自社で作ったほうが儲かるだろう」と思い、サンエス側の空調服をパクって製造したとする。

だが、この仮説には無理がある。なぜならば、(株)空調服は空調服を製造販売しているメーカーなので不満がないからである。特許もあるし、自社商品もメディアに取り上げられてきた実績もある。つまり、訴えを起こす動機もないし、パクる必要もないのだ。だから、今回は(株)空調服が原告ではなく、被告になったのではないだろうか。

その後の裁判記録では、お互いの主張がぶつかり合う。サンエスは作業服の類似性を訴えることに加えて、「KU90550」の模倣に絞って主張。対して(株)空調服は、開発や販売はすべて自社で行い、商品を仕入れて販売していたのはサンエスだと反論。お互いが譲ることなく、2019年9月5日、東京地方裁判所で判決が下された。

判決は、サンエスの訴えを全面的に棄却。(株)空調服の主張を認めることになった。

 

素人目から見ても、サンエスに無理がある裁判だと思った。しかし、判決が私の予想通りになったからといって、今回の案件は他人事のように捉えられるような話ではない。

特許や契約書、納品書の証拠があったとしても、ある日突然、製造を委託している会社から「その商品はうちの会社の商品だ」と訴えられる可能性がある。お金に余裕のない零細企業であれば、大企業から訴状が届いた時点で泣き寝入りだ。このような最悪の事態を避けるためにも、やはり特許は取るべきだし、信頼できる取引先でも、契約書はしっかり作っておくべきである。

なお、今回の判決に関してサンエスにコメントを求めたところ、期日内に返事をいただくことはできなかった。取材した立場としては、どんな形であれ、今回の一件に関して話を聞いてみたかったところである。

そして、気になるのは今後の展開である。今年の夏、多くの企業からたくさんのファン付き作業服が販売された。有名な大企業も次々にファン付き作業服業界に参入しているが、特許権という文化に疎い繊維業界において、節操なく「売れているものに飛びつく」というのは以前から問題視されていたところもでもあった。

果たして、これらのファン付き作業服のうち、特許を侵害していないものがいくつあるのか。今回、東京地裁の判決によって「空調服はサンエスのものではない」と認められた意味は大きい。

(株)空調服は開発と当初から空調服に関する特許を多数有している。もし、少しでも特許を侵害するような商品が市場に出回るのであれば、差し止め、商品の破棄、損害賠償を起こされるリスクがつきまとうことになる。

どうやら来年の夏も、涼しいファン付き作業服の業界で、熱い戦いが繰り広げられそうである。