写真はすべて筆者提供/手前が(株)空調服の空調服。奥がサンエスの空調風神服
# 空調服

あの「空調服」にパクリ騒動? 知られざる熱い「訴訟問題」の顛末

あなたの会社も他人事ではない
いま工事現場などでよく見かける、独特なデザインの“ファン付きウェア”「空調服」。例年厳しい暑さが続く日本では欠かせないヒット商品となった。
しかし、そんな空調服をめぐる「訴訟問題」があることをご存じだろうか。9月5日に東京地裁で判決がくだされたこの問題を、密かに追っていたのが、『訴訟合戦』の著書もある経営コンサルタントの竹内謙礼氏だ。作業服業界全体にも波及するかもしれない、「熱い裁判」の行方はいかに。

「空調服」はパクリだった?

工事現場で変わった服を見かけるようになった。腰に小型の扇風機がついており、上着が空気で膨れ上がっている。

「空調服は夏の必需品なんです」

教えてくれたのは知人の作業服店の店主。最近、爆発的に売れているという。服に扇風機のファンをつけるとはナイスアイデア。早速、取材しようと思ったところ、店主は顔をしかめた。

「この空調服、訴訟問題とかあってややこしいんですよ」

夏を涼しくするはずの空調服。裏側では熱い問題が勃発しているようである。

手前が(株)空調服の空調服。奥がサンエスの空調風神服

KADOKAWAで『訴訟合戦』という本を書かせてもらって以来、裁判ネタには無性に首を突っ込みたくなる。業界関係者にヒアリングを行い、今回、訴訟になっている事件に目をつけ、公に閲覧できる裁判記録に目を通した。

事件の全容としては「不正競争行為差止等請求」である。分かりやすく言えば「あなたの会社の商品は、うちの会社の商品のパクリだから、売るのは止めろ」という訴えである。

 

訴えた原告は広島県福山市の作業服メーカー「株式会社サンエス」。会社概要によると2018年の売上高は連結で288億円。従業員数約700名の大企業である。対して、訴えられた被告は東京都板橋区の「株式会社空調服」。求人サイトの情報によれば2017年の年商は23億円。従業員数14名の零細企業だ。

訴状を見た私は真っ先に「大企業のヒット商品を、小さな会社がパクったのかな?」と思った。しかし、裁判記録を追いかけると、そんな単純な話ではないことがすぐに分かった。

疑問だらけの訴状

裁判記録を訴状から順を追って説明していきたい。

なお、商品名が「空調服」であり、会社名も「空調服」という名称のため、文章がややこしくならないように、会社名を表記する場合は「(株)」をつけることにした。また、裁判記録では企画販売を請け負う「(株)空調服」と空調服を研究開発する「株式会社セフト研究所」の2社が登場するが、両社とも同一経営者、同一所在地にて協同で空調服事業を営んでいるため、本文では「(株)空調服」で両社をまとめて解説したい。

2017年3月、原告のサンエスは被告の(株)空調服に対して、空調服の製造販売の停止、破棄に加えて4000万円の賠償金を支払うよう訴訟を起こした。訴状によると、2002年に一度だけ(株)空調服とサンエスは“意見交換”を行っているが、それ以降、サンエス独自で空調服の開発を行い、2005年に空調服の製造販売を開始。宣伝広告を行ったり、ネットで販売をしたり、「空調服の元祖はサンエスだ」という証拠を写真付で訴状に記していた。

また、サンエスは「(株)空調服はサンエスにとって、商品の仕入れ先のひとつでしかない」ということも強く訴えていた。空調服に取り付けるファンは(株)空調服から購入していたものの、完成品の空調服は、サンエスから(株)空調服が仕入れて販売していただけで「それで空調服を開発したと言うのはおかしいだろ」というのが、言い分だった。