雨宮紫苑さんは22歳でドイツに移住し、27歳の今年ドイツ人の男性と結婚した。もし将来子どもが誕生したら、その子はドイツのルーツをもち、日本のルーツももつ。

そもそもアメリカのトランプ大統領だって祖先をたどればドイツからの移民だ。「移民」がその国に根付いたら、その国の人となり、その国を支えていく。

では、グローバルな現代、いったい「外国人」とは何を意味することになるのだろう。

「どこから来たの?」の難しさ

「Woher kommst du?/Wo kommst du her?」はドイツ語で「どこから来たの?」、英語でいう「Where are you from?」という意味だ。たいていの教科書に載っている例文だから、ドイツ語を勉強したことがある人なら一度は目にしたことがあるだろう。

でもこの表現には、実際のところ2つの解釈がある。「どの国から来たのか」と国籍や移民背景を聞く場合と、「ドイツ国内のどこから来たのか」と国内の出身地や居住地を聞く場合だ。

そのことを知ったのは、はじめてドイツにやってきた大学2年生の夏のこと。学生寮にある共同キッチンで夕飯を作ろうとしていたところ、アラブ系の見た目をした少年が、なにやらおいしそうな料理を大量に作っていたのだ。

見慣れない食べ物だったので「これは何?」と聞いてみたら、「ラマダン期間中で夜ご飯をたくさん作ってるから、君も食べる?」とおすそ分けをいただき、ちょっとした雑談をすることに。

単語単位でしかドイツ語を話せないわたしに対し、彼は流暢なドイツ語で返事をする。すごいなぁと思い、「どこから来たの? いつからドイツに住んでいるの?」と聞いてみた。

すると彼は笑って、「生まれも育ちもドイツだよ。親はどこ出身かってこと?」と言った。どうやら彼は、移民2世だったようだ。

当時のわたしは、ドイツに来たばかりということもあって、「ドイツ人=キリスト教徒の白人」だと勝手に思い込んでいた。だから、ムスリムでありアラブ系に見える彼のことを勝手に「自分と同じ外国人」だと決め付けて、こういう質問をしたのだ。

その答えを聞いたときは「こういう人もいるんだなぁ」くらいの認識だったけど、家に帰ってからふと疑問が湧いてきた。

「彼はいったい何人(なにじん)なんだろう?」

ドイツ・ベルリンの最も有名なショッピング街、クアフュルステンダム Photo by iStock