2019.09.12

人はお金で買える。もちろんあなたにも値札がついている。

「禁じられた取引」どこまで許される?
ジュリア ショウ

人間の平均価格は九〇ドル

おそらく奴隷ビジネスほど社会規範が歪められた領域はないだろう。自由を奪われ、権利を奪われ、人間性を奪われた奴隷たちは、人間ではなく金儲けの手段として扱われる。奴隷たちは身長や体力、容姿により値段が付けられ、その値段で売られる。

ケビン・ベイルズは人権専門の弁護士であり、現代の奴隷制を調査している。彼の調査から、現代の人間の平均価格は九〇ドルと以前より安くなったことがわかっている。彼の意見では、人間の価格が急落したのは、おそらく世界的な人口爆発のせいで、搾取される弱い立場の人たちが世界中で増えつつあるからだ。法律的には奴隷制という言葉にはもっと広い意味があるが、ベイルズが定義した現代の奴隷とは、暴力に脅されながら無報酬で働かされ、そこから逃げ出せない人たちのことだ。

奴隷はどれくらいいるのだろう? 国連の国際労働機関によれば、奴隷制は地球上のすべての国で違法でありながら、今日、世界中で少なくとも二一〇〇万人の人たちがなんらかの奴隷状態にある。

私にとって奴隷制は受け入れがたいものだ。性的な奴隷制は特にそうだ。若い人たちからすべて――自由、健康、尊厳、人生――を奪うことは、この上なく残酷な仕打ちだと感じる。人があっという間に連れ去られ、奴隷にされる様子を想像するのは簡単だ。行くべきでないパーティに行く。親切な知らない人の車に乗る。あるいは、騙されて奴隷にされる最も一般的な原因とベイルズが指摘するもの――間違った相手を信頼し、求人に応じてしまうことだ。

普通の生活がけっして生活とは呼べないものに変わるのは、恐ろしいほど簡単なことであるらしい。そして加害者は何を得るのだろう? 金? 冗談でしょう? しかし、私には理解しがたいことに目的は金だ。ベイルズによれば、「相手を虐げ苦しめるために奴隷にする者などいない。ただ利益を得るためにそうする」。

 

奴隷制はビジネス。それもビッグビジネスだ。奴隷制を研究する経済学者シッダールタ・カラは、「現代の奴隷制は私の想像以上に利益を生んでいることがわかった」という。カラは一五年間で五一ヵ国のデータをまとめ、五〇〇〇人以上の奴隷制の被害者から聞き取りをおこなった。そこから彼が発見したのは、「奴隷ひとり当たりの利益は年間数千ドルから数十万ドルと幅広く、年間利益の総額は一五〇〇億ドルにも上ると推測される」ことだ。

被害者ひとりから得られる平均利益は年間三九七八ドル、奴隷制全体のおよそ五パーセントを占めるセックス・トラフィック(訳注/性的人身売買)の被害者から得られる利益は平均三万六〇〇〇ドルと、彼は算出している。(『悪について誰もが知るべき10の事実』第7章「スーツを着たヘビ――集団思考の心理学」より。翻訳:服部由美。この記事は「困窮している人を「だったら働けよ」とさげすむ社会の、居心地悪さ」に続きます)