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# 欧州

「ハード・ブレグジットなら英国経済崩壊」とは言い切れない理由

最終的にはイギリスの政治力次第だが

決められない政治

このところ、「ブレグジット(イギリスのEU離脱)」を巡るイギリス議会の混乱が連日ニュースを賑わせている。

ボリス・ジョンソン英首相は、10月の「ハード・ブレグジット(EUとの完全決別)」の実現を目指しているが、多くの英国政治家や国民は、ハード・ブレグジットでは英国経済・社会へ与える影響が強すぎる懸念があるとしてジョンソン首相の方針に反対している。

だが、振り返ってみると、メイ前首相が退陣を余儀なくされたのは、EUとの関税協定は維持するなどの「ソフト・ブレグジット」路線が生ぬるいと考えた保守系議員が多数を占めたためであった。

ニュース(特に日本の)は、いかにも圧倒的多数がブレグジット自体を反対しているような論調で報道しているが、ブレグジット自体の見直し論は少数派である。

北アイルランドの問題等、ブレグジットを実現するには高いハードルがいくつかあるが、これからの実務的に面倒な手続きを嫌気して、イギリス政治は「ハード・ブレグジット」を選択すべきか、「ソフト・ブレグジット」を選択すべきかで逡巡しているのではないかと考える。

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この局面では、首相が強烈なリーダーシップでどちらかの路線に導くしかない。そこで、ジョンソン首相は、議会の解散・総選挙を実施して、国民の信を改めて問うと同時に、ハード・ブレグジット路線を推進しようと考えているようだが、イギリス議会はこれをも議会民主主義のシステムを利用して否定しようとしている。

結局、「決められない政治」が横行しているのは、民主主義の先進国であるイギリスも同様であるようだ(もしくは、民主主義であるが故に真に重要なものごとが決まらないのかもしれない)。

最近のイギリス経済の低迷は、ブレグジットそのものというよりも、この「決められない政治」がもたらしている側面も否定できない。

 

2019年4-6月期のイギリスの実質GDP成長率は前期比年率換算で-0.8%とついにマイナス成長となった(ただし前年比では+1.2%)。成長を押し下げているのは設備投資である(前期比年率換算で-2.0%)。

イギリスの設備投資は、2016年の国民投票以来、大幅に減速し、現在、前年比では4四半期連続の減少となっている。例えば、イギリスに生産拠点を置く製造業などはブレグジットがどのような形態で実現するかで生産拠点の移転、もしくは他地域への分散化を図る必要が出てくるかもしれない。したがって、更新投資も含め、設備投資をしにくい状況であることは十分理解できる。

だが、設備投資を除けばイギリス経済は意外と底堅い。実は2019年4-6月期の成長率が低下したのは、在庫が大幅に減少したことが直接的な原因であった。前年比でみると、在庫減の寄与度は-0.9%だったので、これがもしゼロだったとすれば、前年比成長率は+2.1%と逆にかなり高かったことになる。

イギリスの製造業はブレグジットに備え、物資不足懸念からこれまで生産を増やしてきたが、逆に在庫が増え過ぎたため、今度は一気に在庫調整を進めたことが成長率を押し下げた。ただ、これまでの在庫調整のパターンと今回の在庫調整の大きさを考えると、今後、在庫による成長率の押し下げ要因はかなり低下していくと思われるので、イギリスの成長率が意外と底堅く推移するということもあり得る。

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