「乙武義足プロジェクト」が進行している。膝がない、腕がない、歩いた経験がない――乙武洋匡氏はそんな身体の「三重苦」と闘いながら、歩行練習に励んでいる。

義手が完成すると、乙武氏はその400グラムの重さに思った以上に苦しんだ。「みぞおちで歩く」というアドバイスと気合でそのハードルを越えたが、そこにはまた新しいハードルが待ち受けていた――。乙武氏がリポートする。

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350グラムずつ軽くなった!

6月25日。

義足の軽量化が本格化した。第一弾は太ももを包み込むソケット部分だった。沖野氏がスーツケースに入れて運び込んだ新しいソケットにはさまざまな修正が施されていた。太ももがひと回り大きくなったのに合わせてソケットの形が調整された。さらには足の付け根の骨があたる部分の修正も行った。そして素材がプラスチックからカーボンに変わったことで、片足につき、およそ350グラム軽くなったのがいちばんの変化だ。

エンジニアの遠藤氏が右手で触っている部分がソケット。ここがカーボンに変わったことで350グラムずつ軽くなった 撮影/森清

また、膝と足先をつなぐスチール製パイプのアライメント(位置関係)が調整され、パイプの位置が5ミリ前方に改められた。このほうが体重を乗せやすいだろうという沖野氏の判断だった。

「変化、感じますか」

沖野氏にそう言われ、新しい義足で立ってみる。ソケットはいままでよりもキツい気がしたが、慣れてくれば足の動きがより伝わるだろうと思えた。アライメントの調整についても、体重を乗せる位置がピタッと決まる感じがした。ただ、重量の変化は足先のほうが感じやすいようで、ソケットの軽量化はあまり感じられなかった。

7月2日。

この日は足首から下の「足部」と呼ばれる部分の軽量化が行われた。

これまで私は今仙技術研究所の「J-Foot」というタイプを使っていたそうなのだが、沖野氏はその軽量版である「J-Footライト」とオットーボック社(ドイツ)の「トライアス」を用意してくれた。ソケットと違い、やはり足先の重量は敏感に感じとれるようで、どちらも従来の「J-Foot」に比べると、かなり軽く感じた。だが、ドイツ製はかなりしなやかな作りで、これまで日本製の硬さに慣れていた私にとっては、踏み込んだときの沼に沈んでいくような感覚が苦手で、結局これまでの軽量版である「J-Footライト」を選択した。 

片足550グラムから500グラムへ。わずか50グラム軽くなっただけだが、太もも部分を包むソケットが350グラムより減ったときよりも、足先が50グラム減るほうが、ぐっと歩きやすくなることを実感した。

だが、このころの私はひそかにストレスを溜め込んでいた。義手をつけてバランスを崩し、翌週になんとか感覚を取り戻し、その翌週にソケットが交換され、また感覚の違いに戸惑うことになり、その翌週に今度は足部が交換され――といったように、毎週のように新しいことが試されていた。わずか400グラムの義手がついただけでバランスを失ってしまうほど、微妙な感覚のズレは致命的になる。毎回新しいことを試しては、身体をそれに対応させていく。これは言葉で表すよりも、かなりの負担を強いられる作業だった。