イギリスの政治は劣化したのか? 「EU離脱問題」の現在地

ジョンソン首相の論理矛盾に暴挙…
笠原 敏彦 プロフィール

一貫したポリシーなど感じられない

最後に、ブレグジットをめぐる動きに話を戻したい。

ジョンソン首相は10月31日の「合意なき離脱」を封じられたが、EUに離脱期限の延期を要請するぐらいなら「野垂れ死にする方がましだ」と強気の姿勢を崩していない。

ジョンソン首相は離脱実現のための「奇策」を練っているのだろうか。

イギリスの報道では、離脱延期法を無視する▽離脱延期を承認しないようEU加盟国に働きかける(承認は全会一致)▽EUに対し離脱延期を求める英議会の書簡とともに、離脱延期を望まないジョンソン政権の意思を伝える、などの説がまことしやかに流れている。

こんな報道を見ると、イギリスの政治はそこまで劣化したのかと愕然とする。

 

ジョンソン首相の露骨な政治手法を前に、「人を見たら泥棒と思え」的な疑心暗鬼が広がっているようである。

コービン労働党党首が議会で、ジョンソン首相の解散総選挙の動議を「邪悪な王妃から白雪姫への(毒を盛られた)リンゴ」に例えて一蹴したことが、その事情を物語る。

しかし、筆者はジョンソン首相がそこまで強引な手法を取るとは思わない。

なぜなら、ジョンソン氏には一貫したポリシーなど感じられないからである。

EU離脱の是非をめぐる国民投票のキャンペーンでは、残留支持か離脱支持かでぎりぎりまで迷い、残留を支持する新聞コラムまで用意していたというエピソードは有名である。

状況が変われば、ころりと立場を変えてしまうこともあり得るだろう。

ジョンソン首相は9日のバラッカー・アイルランド首相とのダブリンでの会談後、「合意なき離脱」となれば「政治の失敗である」とまで明言し、EUとの再交渉に本腰を入れる姿勢を見せた。

さらにアイルランドとの国境管理問題でも、離脱協定案からのバックストップ条項の削除をレッドライン(譲れない一線)とする従来方針を軟化させ始めてもいる。

筆者は、この問題には意外と落としどころがあると思っている。このテーマは次回以降の本コラムで改めて取り上げてみたい。