イギリスの政治は劣化したのか? 「EU離脱問題」の現在地

ジョンソン首相の論理矛盾に暴挙…
笠原 敏彦 プロフィール

ジョンソン首相の論理矛盾

そして、ジョンソン政権が議会のコントロールを完全に失う決定的な一打となったのが、保守党の造反議員の粛清である。

またしても自らが掘った墓穴なのである。

離脱延期法の採決で賛成に回ったフィリップ・ハモンド前財務相や、49年の下院議員歴を誇るケネス・クラーク元財務相ら党重鎮を含む21人の保守党議員をあっさりと除名処分にしたのである。

これにより、下院(定数650)における保守党の議席数は288まで減少し、閣外協力する北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)の10議席を足しても、20議席前後も過半数に届かない事態に陥ってしまったのだ。

これにより、ジョンソン政権がまともに機能する余地はほぼなくなったのである。

 

ジョンソン首相は「鉄の規律」を求めたつもりなのだろう。しかし、結果は逆に求心力が低下する方向に出ている。

有力閣僚やスコットランド保守党の党首、実弟で閣外相(大学・科学担当)のジョー・ジョンソン議員らが相次いで抗議の辞任を表明する事態に発展したのである。

イギリスは議会主権の国である。

「EUから主権を取り戻す」ことを離脱の大義に掲げるジョンソン首相が、その主権が在する議会の封じ込めを図ったことは、明らかな論理矛盾である。

今回の反ジョンソン首相の動きは、イギリス政治における行政府の立法府支配が強まる流れの中で、議会主権の矜持が示されたということだろう。