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イギリスの政治は劣化したのか? 「EU離脱問題」の現在地

ジョンソン首相の論理矛盾に暴挙…

EU離脱問題の現在地

イギリスの欧州連合(EU)離脱問題は、ボリス・ジョンソン首相の「合意なき離脱」戦略が議会により封じ込められ、イギリスとEUの離脱交渉に再び焦点が戻った。

ジョンソン首相の離脱戦略は呆気なく破綻。英領北アイルランドとアイルランドの間に物理的な国境を復活させない保証策(バックストップ)をめぐる交渉で、EUから新たな合意を引き出すことに活路を見出さざるを得ない状況に追い込まれた形だ。

まずは、最近の経過を簡単に振り返ろう。

イギリス議会は9月3日に夏休み休会が明け、早々と9日に閉会となった。再開は10月14日の「女王演説(与党の施政方針演説)」で始まる新会期を待たねばならない。

今回の実質審議はわずか5日間だったが、この間の「ジョンソン首相vs議会」の駆け引きは劇的だった。

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ボクシングに例えるなら、ジョンソン首相が第1ラウンドで勢いよく飛び出し、反則気味のローブロー(ベルトライン下への攻撃)で議会の動きを封じたかに思いきや、第2ラウンドでは議会側が2発のストレートパンチを顔面に浴びせて逆襲、ジョンソン首相から瞬く間にダウンを奪ってしまった、とでもいう感じだろうか。

ジョンソン首相のローブローとは、イギリス憲政の慣例を無視した5週間という異例の長さの議会閉会措置のことである。議会での「合意なき離脱」への反論を封じることが、その狙いだったことは明らかだ。

 

一方、議会側の2発のストレートパンチとは、超党派の「反ボリス連合」による離脱延期法の成立と、解散総選挙を求めるジョンソン首相の動議の否決である。

離脱延期法は、議会が10月19日までに離脱協定案を承認しない場合は、10月31日の離脱期限(すでに2度延長)を来年1月31日までさらに延期するようEUに要請することを首相に義務付けるものだ。

この離脱延期法のポイントは、EU側が独自の延長期間(残留派は長期化を期待)を示した場合、ジョンソン首相がそれを2日以内に受け入れることを義務付けていることである。

「合意があろうがなかろうが」10月31日には離脱する、と大見得を切ってきたジョンソン首相にとっては耐えられない屈辱だろう。

また、ジョンソン首相の解散総選挙の提案は、「合意なき離脱」を封じられたことを受けた次善の策だった。離脱期限前の10月15日を投票日に定め、保守党が過半数を奪還して「合意なき離脱」を選択肢として取り戻すことが狙いだった。

いずれの敗北も、ジョンソン首相が議会の動向を見誤った結果だ。強硬離脱派として鳴り物入りで登場した割には、拍子抜けするような結末である。

英紙フィナンシャルタイムズによると、新首相(ジョンソン首相は7月24日就任)が最初の議会投票で敗れたのは1894年以来の珍事だという。